「1日1万歩」を目標にして、達成できない日に少し後ろめたさを感じていませんか。結論からお伝えすると、厚生労働省が示している成人の目安は1日約8,000歩、高齢者は約6,000歩で、1万歩ではありません。さらに研究では、年代によってリスク低下が頭打ちになる歩数が違うことも報告されています。この記事では、東海市・太田川駅徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、数字の出どころと現実的な目安を整理します。
要点まとめ
・厚生労働省の目安は成人 約8,000歩/高齢者 約6,000歩(1万歩ではありません)
・「1万歩」は1965年発売の歩数計「万歩メーター」の商品名・文字盤設計に由来すると、開発元の社史に説明されています
・研究では60歳未満は8,000〜10,000歩、60歳以上は6,000〜8,000歩でリスク低下が緩やかになると報告されています
・1日1,000〜2,000歩程度と比べると、7,000歩で全死亡のリスクが47%低かったという報告があります
・歩数だけでは筋力の維持は補えません。同じガイドラインは筋力トレーニングを週2〜3日も推奨しています
「1日1万歩」はどこから来た数字か
この数字の由来は、意外にも歩数計の商品名にあります。歩数計を製造する山佐時計計器の社史には、1965年に発売した日本初の消費財向け歩数計について、「1日1万歩運動にちなんで文字盤の針が1周するとちょうど1万歩になるので『万歩メーター』となった」と記されています。同じ社史には、歩幅70cmなら1万歩は約7kmにあたり、「少なくともこのくらいは歩いてもらいたい」という目安から来た数字だという説明もあります。
ただし、これは開発元企業による説明であって、「1万歩に医学的根拠が一切ない」ことを検証した研究があるわけではありません。正確に言えば、1万歩は最新のガイドラインが示す目安より多い数字、ということになります。
厚生労働省の目安は「約8,000歩」と「約6,000歩」
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、次のように示されています。
・成人:3メッツ以上の身体活動を1日60分以上(1日約8,000歩以上)
・高齢者:3メッツ以上の身体活動を1日40分以上(1日約6,000歩以上)
注意しておきたいのは、この歩数が「必達のノルマ」として示されているわけではない点です。同ガイドは「個人差を踏まえ、強度や量を調整し、可能なものから取り組む」「今よりも少しでも多く身体を動かす」という方向性を併せて示しています。また、成人・高齢者の区分は特定の年齢できっちり線引きされるものではないとも明記されています。
研究では何歩で頭打ちになるのか
ここからは観察研究をまとめたデータです。因果関係を証明したものではなく、あくまで「関連」の話としてお読みください。
年代によって目安が変わります
15の国際的なコホート研究(対象47,471人、追跡期間中央値7.1年)を統合したメタアナリシスでは、歩数が増えるほど死亡リスクが下がる関連が、60歳以上では1日6,000〜8,000歩まで、60歳未満では1日8,000〜10,000歩まで観察されたと報告されています(Paluch et al. 2022)。それ以上歩いても意味がないという意味ではなく、追加のリスク低下が統計的に見えにくくなるという意味です。
40代・50代の方は「8,000〜10,000歩」、60代以降の方は「6,000〜8,000歩」がひとつの参照点になります。
7,000歩でも十分な差が出ています
2025年に発表された57件の研究をまとめたレビュー・用量反応メタアナリシスでは、1日1,000〜2,000歩程度を基準にすると、1日7,000歩では全死亡のリスクが47%低かった(ハザード比0.53、95%信頼区間0.46〜0.60)と報告されています(Ding et al. 2025)。心血管疾患の発症は25%、2型糖尿病は14%、認知症は38%、転倒は28%それぞれリスクが低いという結果でした。
そして全死亡・心血管疾患・認知症・転倒については、1日5,000〜7,000歩あたりでリスク低下の伸びが緩やかになる変曲点があるとされています。
つまり、いま3,000歩の方が7,000歩を目指すことには大きな意味がある一方、すでに8,000歩の方が1万歩に増やすことの上積みは、それほど大きくないと考えられます。少ない人ほど、増やしたぶんの見返りが大きいという形です。
歩く速さは関係あるのか|結論は割れています
「ただ歩くより速歩きが大事」とよく言われます。ここは正直にお伝えすると、研究によって結果が分かれています。
40〜79歳の78,500人を追跡したイギリスの研究では、1日のうち最も歩行が活発な30分間の歩行ペースが、総歩数の効果とは別に、死亡・がん・心血管疾患のリスク低下と一貫して関連していたと報告されています(Del Pozo Cruz et al. 2022)。
一方、平均45歳の米国の成人2,110人を約10.8年追跡した研究では、7,000歩以上で死亡リスクが低い関連は見られたものの、歩行の強度そのものと死亡リスクには関連が見られませんでした(Paluch et al. 2021)。
ですので「速く歩けば歩くほどよい」と言い切ることはできません。ただし速く歩ける体であること自体には価値があると考えています。速く歩けない背景に、股関節が硬い、足首が動かない、お尻が使えていないといった要素が隠れていることは実際によくあります。
歩数だけでは足りないもの
ここが、歩数の話でいちばん抜け落ちやすい部分です。同じ厚生労働省のガイドは、歩数の目安と並べて「筋力トレーニングを週2〜3日」も推奨事項として明記しています。歩数の目標を達成すれば筋トレは不要、という関係ではありません。
歩くことは心臓や血管、血糖の管理、気分の面で意味のある活動です。一方で、筋肉量や骨の維持、片脚で体を支える力といった部分は、歩数だけでは補いきれません。ガイドではマシンやダンベルだけでなく、自重のスクワットや腕立て伏せも筋力トレーニングに含まれると定義されています。特別な道具は必要ありません。
ウォーキングでできること・できないことの整理はウォーキングだけで体は変わるのか?効果と限界を正直に解説でもご紹介しています。
続けるための現実的な考え方
ここからは研究の結論ではなく、TRADが現場でお伝えしている考え方です。
いまの歩数から+1,000〜2,000歩で十分です
3,000歩の方がいきなり8,000歩を目指すと、たいてい続きません。まず今の歩数を3日ほど測って、そこに1,000〜2,000歩を足すところから始めるほうが現実的です。スマートフォンの標準機能でも把握できます。
まとめて歩く必要はありません
1回で歩ききる必要はありません。買い物、駅までの移動、昼休みの数分——分けて積み上げても合計は合計です。ガイドも「今よりも少しでも多く身体を動かす」という方向性を示しています。
歩くと痛みが出る方は、歩数より先に見るものがあります
膝や腰、足裏に痛みが出る場合、歩数を増やすことが必ずしも良い方向に働くとは限りません。足のアーチ、股関節の硬さ、お尻の使い方——負担のかかり方は人によって違います。この場合は、歩数目標を渡すより先に、どこに負担が集まっているかを確認するほうが確実です。歩き方を整えるだけで腰と膝の負担が減る理由もあわせてご覧ください。
参考にした主な研究・ガイドライン
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」
・山佐時計計器株式会社「万歩計のあゆみ」
・Paluch et al.(2022)15の国際コホートのメタアナリシス/The Lancet Public Health(PubMed)
・Ding et al.(2025)システマティックレビュー・用量反応メタアナリシス/The Lancet Public Health(PubMed)
・Del Pozo Cruz et al.(2022)前向きコホート研究/JAMA Internal Medicine(PubMed)
・Paluch et al.(2021)前向きコホート研究(CARDIA)/JAMA Network Open
よくある質問
Q. 結局、1日何歩歩けばいいですか?
厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」の目安は、成人が1日約8,000歩以上、高齢者が1日約6,000歩以上です。研究では60歳未満で8,000〜10,000歩、60歳以上で6,000〜8,000歩を境にリスク低下が緩やかになると報告されています(Paluch et al. 2022)。ただしこれはノルマではなく、個人差を前提とした目安です。
Q. 1日1万歩に根拠はないのですか?
「根拠がまったくない」と断定できる研究は確認できていません。確認できるのは、1965年発売の歩数計「万歩メーター」の商品名・文字盤設計に由来するという開発元の社史の説明です。現在の厚生労働省のガイドラインが示す目安は1万歩より少ない数字である、という整理が正確です。
Q. 7,000歩でも意味がありますか?
あります。1日1,000〜2,000歩程度と比べると、1日7,000歩で全死亡のリスクが47%低かったという報告があります(Ding et al. 2025)。全死亡・心血管疾患・認知症・転倒については5,000〜7,000歩あたりでリスク低下の伸びが緩やかになるとされており、歩数が少ない方ほど増やしたぶんの見返りが大きい形になります。
Q. 速く歩いたほうがいいですか?
研究によって結果が分かれています。歩行ペースが総歩数とは別にリスク低下と関連したという報告がある一方(Del Pozo Cruz et al. 2022)、歩行強度と死亡リスクに関連が見られなかったという報告もあります(Paluch et al. 2021)。「速いほどよい」と言い切ることはできませんが、速く歩ける体であること自体には意味があると考えています。
Q. 歩いていれば筋力トレーニングは必要ありませんか?
必要です。厚生労働省の同じガイドラインは、歩数の目安と並べて筋力トレーニングを週2〜3日行うことを推奨事項として明記しています。歩数を達成すれば筋トレが不要になるという関係ではありません。マシンやダンベルだけでなく、自重のスクワットや腕立て伏せも筋力トレーニングに含まれると定義されています。
歩数の前に、歩ける体かを確かめる|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
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