「猫背を直すには背中を鍛えたほうがいい」——よく耳にする言い方です。方向としては間違っていませんが、結論からお伝えすると、猫背・巻き肩の方に必要なのは「背中を強くすること」より、まず「働いていない場所に働いてもらうこと」です。この記事では、東海市・太田川駅徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、筋電図の研究でどの動きがどの筋肉に働くと確かめられているかを整理したうえで、最初に始めたい3種目をご紹介します。あわせて、「効く」と「姿勢が変わる」は別の話という点も正直にお伝えします。
要点まとめ
・猫背・巻き肩では、肩甲骨を下に引き下げる筋肉(僧帽筋下部)と、肩甲骨を肋骨に沿わせる筋肉(前鋸筋)が働きにくくなりがちです
・筋電図の研究では、うつ伏せで腕を頭上へ挙げる動作で僧帽筋下部の活動が最大になったと報告されています(Ekstrom et al. 2003)
・同じ研究で、前鋸筋は肩甲骨面での高い位置までの挙上で最大になりました
・最初の3種目は①うつ伏せで腕を頭上へ ②肩甲骨面で腕を挙げる ③引く動作です
・ただし「その種目で筋肉が働く」ことと「続けたら姿勢が変わる」ことは別の研究の話です
猫背・巻き肩のとき、背中側で何が起きているか
肩が前に出た姿勢では、肩甲骨が外側へ開き、やや上に持ち上がった位置で落ち着きます。この状態が続くと、肩甲骨を下へ引き下げる働きをする僧帽筋の下部と、肩甲骨を肋骨に沿わせておく前鋸筋が仕事をしなくなっていきます。
代わりに働きすぎるのが、首から肩にかけて走る僧帽筋の上部です。「肩こりがひどい人ほど、肩の上ばかり張っている」という状態はここから生まれます。強くしたいのは上ではなく、下と横——ここが出発点になります。
鍛える前に、動く状態になっているか
ひとつ順番の話をさせてください。胸の前側が縮んだまま、背中だけ鍛えようとしても、肩甲骨が動ける範囲が確保できません。背中の運動をしているつもりで、腰を反らせて代用していた、というのはよくある形です。
胸や背骨の動きから整えたい方は、胸椎が硬いと猫背になる理由と猫背を改善するエクササイズを先にご覧ください。この記事は、その次の段階にあたる「鍛える」側の話です。
最初に始めたい3種目
1. うつ伏せで腕を頭上へ(左右そろえて8〜10回×2セット)
健康な成人30名を対象にした筋電図の研究では、うつ伏せで腕を頭の上方へ挙げる動作のときに、僧帽筋下部の活動がもっとも高くなったと報告されています(Ekstrom et al. 2003)。肩甲骨を下へ引き下げる筋肉に、はっきり仕事をしてもらえる動きということです。
やり方
1. うつ伏せになり、額の下にタオルを置きます
2. 両腕を斜め上(体に対して「Y」の字)に伸ばし、親指を天井へ向けます
3. 肩をすくめないまま、腕を床から数センチ持ち上げて2秒止めます
4. ゆっくり下ろします
ポイント:高く挙げる必要はありません。上げた瞬間に肩が耳へ近づくなら、それは僧帽筋の上部が代わりに働いています。肩を下げたまま、脇の下から背中の下のほうに力が入る感覚を探してください。腰が反る方は、おへその下にたたんだタオルを敷くと安定します。
2. 斜め前45度に腕を挙げる(肩甲骨面/8〜10回×2セット)
同じ研究で、前鋸筋の活動がもっとも高くなったのは、肩甲骨面に沿って高い位置まで腕を挙げる動作でした。前鋸筋は肩甲骨を肋骨に沿わせておく筋肉で、ここが働かないと腕を上げたときに肩甲骨が背中から浮きます。
やり方
1. 立った姿勢で、腕を真横でも真正面でもなく、その中間(斜め前およそ45度)に下ろします
2. 親指を上に向けたまま、その斜め前の線に沿って耳の横まで腕を挙げます
3. 上げきったところで1秒止め、ゆっくり下ろします
ポイント:最初は手ぶらで構いません。慣れたら500mlのペットボトル程度から。腰を反らせて上げるのは代用ですので、上げにくいところで止めてください。上がる範囲は人によって違います。
3. 引く動作を入れる(8〜10回×2セット)
3つ目は、上の2つとは位置づけが違います。これは筋電図の研究から選んだものではなく、日常に「引く動作」がほとんどないからこそ入れている、TRADの実務的な判断です。押す動作(ドアを押す・体を起こす)は生活のなかにありますが、引く動作は意識しないとまず出てきません。
やり方(チューブまたはタオルで)
1. ゴムチューブを柱などに固定し、両手で持ちます(ゴムチューブがなければ、フェイスタオルの両端を持って胸の前で軽く外へ張り、その張りを保ったまま行います)
2. 膝を軽く曲げて立ち、ひじを体の横をすべらせるように後ろへ引きます
3. 引ききったところで肩甲骨が背骨に寄っているのを確認し、ゆっくり戻します
ポイント:肩をすくめないこと、腰を反らさないこと、あごを前に出さないこと。この3つを守れる強さで行ってください。
頻度の目安
厚生労働省の運動ガイドは、筋力トレーニング全般について週2〜3日を推奨しています。3種目をまとめて行えば10分ほどです。翌日に強い張りが残る場合は、回数かセット数を減らしてください。
正直にお伝えしておきたいこと|「効く」と「姿勢が変わる」は別
ここは、はっきりさせておきたい部分です。
筋電図の研究が示しているのは、「その種目を行っているときに、その筋肉が働いているかどうか」です。続けたら猫背や巻き肩が改善するか、というのはまったく別の問いで、別の研究が必要になります。
背中の丸まりに対する運動の効果をまとめたレビューは、3か月以内の運動プログラムを、若い世代でも高齢の層でも有効と結論づけています。ただし効果の大きさには差があり、高齢の層で報告された変化は小さなものでした(Jenkins et al. 2021)。同じ運動でも、年齢によって結果の出方は違うということです。40〜60代の、診断のつく状態ではない「姿勢のクセとしての猫背」を対象にした研究は、ほとんど見当たりません。
ですからTRADでは、見た目の姿勢が何度変わるかより、動かしやすさを目安にしています。腕が上げやすくなった、肩の上の張りが軽くなった、長時間座ったあとに戻しやすくなった——こうした変化のほうが、実際に生活で実感できる部分です。
続けても変わらないと感じるとき
・肩がすくんだまま行っている:狙った筋肉ではなく、もともと働きすぎている僧帽筋上部を鍛えている状態です。回数を半分にして、姿勢を優先してください
・胸の前側が硬いまま:動ける範囲がないところで鍛えても手応えは出にくくなります。ゆるめる工程を先に入れてください
・運動の時間以外が変わっていない:1日10分の運動より、残りの時間の姿勢のほうが体には影響します。座り方を見直したい方はデスクワークの正しい座り方もご覧ください
痛みが出る、しびれを伴う、腕が特定の角度で急に上がらなくなる——こうした場合は運動を続けず、医療機関にご相談ください。
参考にした主な研究・ガイドライン
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて(e-ヘルスネット)
・Ekstrom et al.(2003)実験研究(筋電図)/Journal of Orthopaedic & Sports Physical Therapy(PubMed)
・Jenkins et al.(2021)システマティックレビュー・メタアナリシス/Musculoskeletal Science and Practice(PubMed)
よくある質問
Q. 背中を鍛えれば猫背は治りますか?
「治る」とお伝えできる根拠はありません。筋電図の研究が示しているのは、その種目でその筋肉が働いているかどうかであって、続けたら姿勢が変わるかは別の研究の話です。背中の丸まりに対する運動の効果をまとめたレビューは、若い世代でも高齢の層でも有効と結論づけていますが、効果の大きさには差があり、高齢の層での変化は小さなものでした(Jenkins et al. 2021)。TRADでは見た目の角度より、動かしやすさを目安にしています。
Q. なぜ肩甲骨を「寄せる」だけではだめなのですか?
寄せる動きだけでは、肩甲骨を下へ引き下げる僧帽筋下部や、肩甲骨を肋骨に沿わせる前鋸筋に十分な仕事が回らないことがあります。猫背・巻き肩では肩甲骨が外へ開き、やや上に持ち上がった位置で固まりやすいため、下へ引き下げる方向と、肋骨に沿わせる方向を分けて入れるほうが確実です。
Q. 週に何回、どのくらいやればいいですか?
厚生労働省の運動ガイドは筋力トレーニング全般について週2〜3日を推奨しています。ご紹介した3種目はそれぞれ8〜10回×2セットで、まとめて10分ほどです。翌日に強い張りが残る場合は回数かセット数を減らしてください。
Q. 器具がなくてもできますか?
できます。うつ伏せで腕を頭上へ挙げる種目と、肩甲骨面で腕を挙げる種目は手ぶらで構いません。引く動作だけは負荷が必要ですが、ゴムチューブがなければ、タオルの両端を持って胸の前で外へ張り、その張りを保ったままひじを後ろへ引く形でも代用できます。慣れてきたら500mlのペットボトル程度から重さを足してください。
Q. 肩がすくんでしまいます。どうすればいいですか?
肩がすくむのは、狙っている僧帽筋の下部ではなく、もともと働きすぎている上部が代わりに働いているサインです。腕を挙げる高さを下げ、回数を半分にして、肩を下げたまま行える範囲に戻してください。動かせる範囲が狭い場合は、胸の前側をゆるめる工程を先に入れると変わることがあります。
どこが働いていないかを確かめてから|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
TRADは、鍛える前に姿勢・動作を評価するところから始めるパーソナルジムです。肩甲骨がどう動いているか、どの筋肉が代わりに働いているかを確認したうえで、必要な種目と順番を組み立てています。完全個室のマンツーマン指導です。
姿勢カウンセリング付きの無料体験を受付中です。その場での即決はお願いしていませんので、じっくりご検討ください。
TRADパーソナルコンディショニングジム
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