肩こりとは少し違う場所——肩甲骨と肩甲骨の間、背骨の両わきが重い、張る、自分では手が届かないというお悩みです。40〜60代の方からよくうかがいます。この場所について、先に正直なところをお伝えします。原因を1つに決めつけられません。「胸椎(背中の背骨)が硬いから」という説明はよく見かけますが、9件の研究をまとめたレビューは「胸椎の後弯が痛みの発生の危険因子であるとは確認できなかった」と結論しています。そして日本整形外科学会のページには「胸椎はほとんど動きません」と書かれています。東海市・太田川駅から徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、分かっていることと分かっていないことを分けて整理します。
要点まとめ
・胸椎(背中)の痛みは珍しくなく、生涯で経験する割合は15.6〜19.5%と報告されています(測定の定義で大きく変わります)
・「胸椎が硬いから痛い」という因果関係は、研究では確認されていません
・日本整形外科学会のページには「胸椎はほとんど動きません」と書かれています。背中は、そもそも大きく動く部位ではありません
・「座りすぎが原因」も単純ではありません。座る時間が長いほど痛みの改善が速かった、という報告もあります
・事務職47名の試験では、肩甲骨まわりの筋肉を鍛える運動で首・肩の痛みが2.0減少しました(指導つき・10週間・週3回20分)
・ただし「自宅で1人だけで行う体操」の効果を単独で示した研究は、今回の調査では見つかりませんでした
・安静時の痛み・夜間の痛み・発熱・しびれや力の入りにくさがあるときは、運動より先に医療機関へ
この場所の重さは、どのくらいの人が経験するのか
一般の方を対象に、胸椎(背中の背骨)の痛みの頻度を調べた研究を集めたレビューがあります(Briggs et al. 2009)。33件の研究が対象で、研究の75.7%はヨーロッパのものです。
・ある時点での有病率…4.0〜72.0%
・1か月…1.4〜34.8%/1年…3.5〜34.8%/生涯…15.6〜19.5%
・原典は「胸椎の痛みの有病率は、胸椎の痛みをどう定義するかによって変動した」と述べています
・原典の結論は「胸椎の痛みは一般集団でよくみられる状態です。生物心理社会的な関連についての証拠はありますが限定的で、さらなる前向き研究が必要です」というものです
数字の幅が非常に広いのは、「痛み」をどう定義したかが研究ごとに違うためです。ですので「◯%の人が経験する」と一言で言えるものではありません。なお日本人を対象にしたこの部位のデータは、今回の調査では見つけられませんでした。
「胸椎が硬いから」と言い切れるのか
背中の真ん中の話になると、ほぼ必ず「胸椎の硬さ」が出てきます。ここを調べたレビューがあります(Joshi et al. 2019)。1990年から2017年の文献から、首の痛みがある方と健康な方を比べた9件の研究が選ばれています。
・胸椎の後弯(背中の丸まり)が強いことは、頭が前に出る姿勢と正の相関がありました
・しかし首の痛みの強さや障害の程度とは、一様には関連していませんでした
・首の痛みがある方では胸椎の可動性が低下していました
・ただし「胸椎の後弯が痛みの発生の危険因子であるとは確認できなかった」と明記されています
・原典は「胸椎の姿勢と頸椎の機能障害の因果関係を明らかにするには、さらなる研究が必要である」と結んでいます
整理するとこうなります。関連はあります。でも「硬いから痛い」という順番は確かめられていません。痛みがあるから動かさなくなって硬くなった、という逆の順番もありえますし、どちらも別の何かの結果かもしれません。
ですのでTRADでは、「あなたの背中の重さは胸椎の硬さが原因です」とは申し上げません。確かめられていないことを断定すると、そこから先の判断がすべてずれてしまうからです。
学会は「胸椎はほとんど動きません」と書いています
日本整形外科学会の「胸椎の症状一覧」には、次のように書かれています。
「頚椎と腰椎の間にある胸椎は12個の骨からなり、後弯(後方凸の曲がり)を呈し12対の肋骨と連続しています。胸椎はほとんど動きません。」
ここは大事なところです。胸椎は12対の肋骨とつながっている構造上、首や腰のように大きくは動かない部位だということです。ですので「背中をぐいぐい動かせばすっきりする」という発想からは、いったん離れたほうがよいと考えています。やることは「大きく動かす」ではなく、「本来ある範囲を取り戻す」「肩甲骨と肋骨の関係を働かせる」という方向になります。
同じページには、この部位に関係する病気として胸椎椎間板ヘルニア、側弯症、脊髄腫瘍、転移性脊椎腫瘍、脊髄損傷、後縦靱帯骨化症・黄色靱帯骨化症、脊椎椎体骨折が挙げられています。頻度は高くありませんが、こうしたものが背景にある場合もある、というのが学会の整理です。
「座りすぎが原因」も、単純ではありません
デスクワークが長いから背中が重い——自然な説明に聞こえます。ただ、ここにも例外の報告があります。
デンマークの労働者625名を対象に、加速度計で職場での座位時間を客観的に測り、1年間に14回、携帯メールで首・肩の痛みの強さを集めた研究です(Hallman et al. 2016)。
・職場での座位時間が長いほど、12か月間の痛みの強さの低下が速いことと関連していました(調整後 p=0.027)
・原典は「座位と痛みの関係については、座位行動についての明確な推奨やガイドラインを作る前に、さらなる研究が必要である」と述べています
この研究の対象はブルーカラーの労働者で、デスクワーカーではありません。ですので「座るほど良い」という話ではまったくありません。ここでお伝えしたいのは、座位時間と痛みの関係は、思われているほど単純ではないということです。
もう1件。首の痛みのないオーストラリアの事務職53名を1年間追跡した研究があります(Hush et al. 2009)。追跡率は100%でした。
・1年間で新たに首の痛みが出た割合は49%(95%信頼区間36〜62%)と、かなり高い数字でした
・女性であることは関連していました(ハザード比3.07、95%信頼区間1.18〜7.99)
・いっぽう心理的ストレス(1.64、0.66〜4.07)、頸椎の可動性(0.44、0.19〜1.05)、運動の頻度(0.64、0.27〜1.51)は、いずれも信頼区間が1をまたいでいます。つまり傾向はあっても、統計的に確かな関連とは言えません
対象は53名と小規模で、日本人のデータでもありません。ただ「これが原因」と言い切れる要因は、実はほとんど見つかっていないということは押さえておいてよいと思います。
肩こりとは、どう違うのでしょうか
ここからは研究ではなく、現場で見ている違いです。
首の付け根から肩の上にかけての張り(いわゆる肩こり)は、腕を支えている筋肉が疲れていることが背景にあることが多く、腕を休めたり、肩を回したりすると変化が出やすい場所です。いっぽう肩甲骨と肩甲骨の間は、肩甲骨を背骨側に引き寄せる筋肉や、呼吸で動く肋骨が関わる位置にあります。
そのため、腕の動きで変わるのか、呼吸で変わるのか、首の動きで出るのかを見ると、同じ「背中が重い」でも手がかりが分かれます。首こりとの関係は首こりがひどい人に共通する3つの姿勢パターン、肩こりについては肩こりが慢性化する本当の理由でご説明しています。
自分で確かめる4つの手順
これは研究で検証された検査ではありません。TRADが現場で使っている「手がかりの分け方」です。原因の特定はできませんので、目安としてお使いください。痛みが強く出る場合は、そこで中止してください。
1. 腕を動かして変わるか…両腕をゆっくり前から上げ、下ろします。重さの感じが強まる/軽くなるかを見ます。変化があれば、肩甲骨の動きが関わっている手がかりになります
2. 深呼吸で変わるか…背中側に空気を入れるつもりで、ゆっくり息を吸って吐きます。吸うときに張りが強まるなら、肋骨の動きが関わっているかもしれません
3. 首を動かして出るか…首をゆっくり前後・左右に倒します。首の動きで背中の症状が出るなら、首のほうから来ている可能性があります
4. 姿勢を変えて数分で変わるか…立つ、座る、横になるで変化するかを見ます。姿勢を変えてもまったく変わらない、じっとしていても痛む場合は、運動より先に医療機関にご相談ください
運動で何が示されているのか
肩甲骨まわりを鍛えた試験
慢性的な首・肩の痛みがある事務職労働者47名を対象にした試験があります(Andersen et al. 2014)。10週間、週3回20分、肩甲骨の機能を高めるトレーニングを指導つきで行う群と、対照群に分けて比べました。内容は下部僧帽筋と前鋸筋が中心で、上部僧帽筋を直接鍛えることは最小限にしています。
・首・肩の痛みが2.0減少(95%信頼区間0.35〜3.64、p<0.05)
・下部僧帽筋の圧痛閾値が129kPa増加(p<0.01)=押されたときの痛みが出にくくなりました
・肩を挙げる筋力が7.7kg増加(p<0.01)
・原典は「痛みの強さの改善の大きさは、臨床的に意味のあるものであった」と述べています
興味深いのは、こっている場所(上部僧帽筋)を直接揉んだり鍛えたりするのではなく、その下の筋肉を働かせたという点です。ただし対象は47名と小規模で、首・肩の痛みが対象です。肩甲骨の間に限った研究ではありません。
予防についての報告
首の痛みがない成人を対象にした5件の試験(1,722名、80%が事務職)をまとめた分析では、運動介入は12か月以内に新たな首の痛みが起きるリスクをおそらく下げるとされました(オッズ比0.49、95%信頼区間0.31〜0.76、中等度の確実性)(Teichert et al. 2023)。
ただし原典は限界もはっきり書いています。5件のうち3件はバイアスリスクが高いと評価され、結果は欠損データに対する感度分析に対して頑健ではなく、効果の臨床的な意義は不明とされています。そしてこれは「予防」の話であって、今ある痛みを改善する効果を示したものではありません。
ここが正直なところです
「自宅で1人だけで行う背中の体操」の効果を単独で検証した試験は、今回の調査では見つけられませんでした。
先ほどのAndersenの研究は指導者がついた10週間のプログラムです。胸椎の運動を扱った別の試験(Park et al. 2021)もありますが、こちらは専用のスリング器具を使い、さらに施術者による首への徒手療法を併用した条件での結果で、対象は女性27名と小規模です。
ですので、この記事でご紹介する自宅での動きは「研究で証明された体操」ではありません。TRADが現場で使っている方法として、そのようにお読みください。
自宅でできる3つ
研究の方向(肩甲骨まわりを、揉むのではなく働かせる)を踏まえた形です。痛みが出ない範囲で行ってください。
1. 壁を使った肩甲骨のスライド…壁に背中とお尻をつけて立ち、両ひじを軽く曲げて壁につけます。ひじと手の甲を壁から離さないよう意識しながら、ゆっくり上げ下げします。5〜10回。肩がすくまないところまでで構いません
2. 壁での押し出し(前鋸筋を使う)…壁に手をついて腕立ての形を作り、ひじを伸ばしたまま背中を丸めるように壁を押します。肩甲骨が背骨から離れていく感覚が出ればうまくいっています。5〜10回
3. 背中で吸う呼吸…椅子に座り、両手を肋骨の下のほうに当てます。手のひらを背中側へ押し広げるつもりで、鼻からゆっくり吸い、口から長く吐きます。5呼吸
胸椎を動かす具体的なエクササイズは胸椎が硬いと猫背になる理由、肩甲骨まわりの動きは肩甲骨が硬い人の特徴と動きを取り戻すエクササイズでご紹介しています。「肩甲骨はがし」が気になる方は肩甲骨はがしの記事もご覧ください。座り方についてはデスクワークの正しい座り方をどうぞ。
運動より先に医療機関へご相談いただきたい場合
次のような場合は、運動を始める前に医療機関にご相談ください。
・じっとしていても痛む/夜、痛みで目が覚める
・発熱を伴う
・だんだん強くなっていく
・手足のしびれ、力の入りにくさ、歩きにくさがある
・胸の痛み、息苦しさ、冷や汗を伴う
・転んだ・ぶつけたあとから痛い
・がんの治療歴がある
こうした「注意すべき徴候」については、国際的な理学療法の団体がまとめた枠組みがあります(Finucane et al. 2020)。ただしその文書自身が「現時点では、ほとんどのレッドフラッグの診断精度について質の高いエビデンスは存在しない」と明記しています。つまりこれらに当てはまったからといって重い病気とは限らず、当てはまらないから安心とも言い切れません。迷われたときは、受診していただくのが確実です。
TRADは運動指導を行う施設であり、医療機関ではありません。痛みの原因を判断することはできませんし、この記事も診断の代わりになるものではありません。
TRADでのご案内の仕方
TRADでは、背中の真ん中の重さを「胸椎の硬さのせい」とも「姿勢のせい」とも決めつけません。研究を見るかぎり、そこまで言い切れないからです。
そのかわり、姿勢と動作の評価で腕を上げたときに肩甲骨がどう動くか、呼吸で肋骨が広がるか、首の動きで症状が出るかを一つずつ確かめます。そのうえで、こっている場所を直接ほぐすのではなく、その下で働くべき筋肉に仕事を戻すという順番で進めます。研究で結果が出ているのも、この方向でした。
東海市・太田川駅から徒歩4分、完全個室のマンツーマンです。背中は自分では見えない場所ですので、動きがどう変わったかをその場でお伝えしながら進められます。
参考にした主な研究・ガイドライン
・Briggs et al.(2009)システマティックレビュー/BMC Musculoskeletal Disorders(PubMed)
・Joshi et al.(2019)文献レビュー/Asian Spine Journal(PubMed)
・Andersen et al.(2014)ランダム化比較試験/Journal of Occupational Rehabilitation(PubMed)
・Park et al.(2021)ランダム化比較試験/Healthcare(PubMed)
・Teichert et al.(2023)システマティックレビュー+メタ分析/Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy(PubMed)
・Hallman et al.(2016)前向きコホート研究/BMJ Open(PubMed)
・Hush et al.(2009)前向きコホート研究/European Spine Journal(PubMed)
・Finucane et al.(2020)国際コンセンサスフレームワーク/Journal of Orthopaedic and Sports Physical Therapy(PubMed)
・日本整形外科学会「胸椎の症状一覧」(日本整形外科学会)
よくある質問
Q. 肩甲骨の間が重いのは、胸椎が硬いからですか。
そう決めつけることはできません。9件の研究をまとめたレビューでは、首の痛みがある方で胸椎の可動性は低下していたものの、「胸椎の後弯が痛みの発生の危険因子であるとは確認できなかった」と明記されています。関連はあっても、硬いから痛いという順番は確かめられていません。痛みがあるから動かさなくなった、という逆の順番もありえます。
Q. 背中をよく動かせばよくなりますか。
日本整形外科学会のページには「頚椎と腰椎の間にある胸椎は12個の骨からなり、後弯を呈し12対の肋骨と連続しています。胸椎はほとんど動きません」と書かれています。背中はもともと大きく動く部位ではありませんので、ぐいぐい動かすという発想からはいったん離れたほうがよいと考えています。本来ある範囲を取り戻すこと、肩甲骨と肋骨の関係を働かせることのほうが現実的です。
Q. デスクワークで座りすぎているのが原因でしょうか。
単純ではありません。デンマークの労働者625名を加速度計と1年間14回の聞き取りで調べた研究では、職場での座位時間が長いほど12か月間の痛みの低下が速いことと関連していました。対象がブルーカラーの労働者ですのでデスクワークにそのまま当てはめることはできませんし、「座るほど良い」という話でもありません。ただ、座位時間と痛みの関係は思われているほど単純ではない、ということは言えます。
Q. どんな運動が役に立ちますか。
事務職47名を対象にした試験では、下部僧帽筋と前鋸筋を中心とした肩甲骨まわりのトレーニングを10週間、週3回20分、指導つきで行った群で、首・肩の痛みが2.0減少しました(95%信頼区間0.35〜3.64)。こっている場所を直接揉むのではなく、その下で働く筋肉を鍛えた点が特徴です。ただしこれは指導者がついた条件での結果で、自宅で1人だけで行う体操の効果を単独で示した研究は、今回の調査では見つけられませんでした。
Q. 病院に行ったほうがよいのはどんなときですか。
じっとしていても痛む、夜に痛みで目が覚める、発熱を伴う、だんだん強くなる、手足のしびれや力の入りにくさがある、胸の痛みや息苦しさ・冷や汗を伴う、転んだあとから痛い、がんの治療歴がある——こうした場合は、運動より先に医療機関にご相談ください。ただし、こうした徴候については国際的な枠組み自体が「ほとんどのレッドフラッグの診断精度について質の高いエビデンスは存在しない」と明記しています。当てはまらないから安心とも言い切れませんので、迷われたときは受診していただくのが確実です。
姿勢評価つき無料体験は9月末まで|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
背中の真ん中は、自分では見えず、手も届かない場所です。TRADは、原因を1つに決めつけず、腕の動き・呼吸・首の動きを一つずつ確かめてから進める完全個室のパーソナルジムです。太田川駅から徒歩4分、駐車場もございます。姿勢評価つきの体験(約90分)は9月30日のご来店分まで無料で、10月1日以降は2,750円(税込)となります。9月中にご入会の方は入会金11,000円(税込)が0円、トレーニングチケット1回分をお付けします。
その場でのご契約はお願いしていません。内容を見たうえで、じっくりご検討ください。ご予約は公式LINE、または予約サイト(空き状況を見る)から承っています。

