腹圧の入れ方|ドローインとブレーシングの違いと40〜60代の始め方|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD

腹圧の入れ方|ドローインとブレーシングの違いと40〜60代の始め方|東海市のTRAD

「体幹を鍛えるには、まずお腹に力を入れて」と言われても、へこませるのか、固めるのか、迷った経験はありませんか。お腹をへこませる方法をドローイン、お腹周り全体を固める方法をブレーシングと呼びます。結論からお伝えすると、この2つは目的が違うだけで、どちらが優れているかは研究でも決着していません。この記事では、東海市・太田川駅徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、2つの違い・具体的なやり方・うまく入らないときの見直し方を整理します。

要点まとめ

腹圧とは、お腹の中(腹腔)の圧力のことです。高まると背骨まわりが安定しやすくなる仕組みが力学的な研究で示されています
ドローイン=お腹をへこませて深い層の筋肉を働かせる/ブレーシング=お腹周り全体に力を入れて固める
・圧の大きさ自体はブレーシングのほうが大きいという実験結果があります(若い男性7名の小規模な研究)
・ただしどちらが優れているかは、研究をまとめたレビューでも結論が一致していません
どちらの場合も、呼吸は止めません。息をこらえて力むことは厚生労働省の運動ガイドでも注意されています

そもそも腹圧とは

腹圧(腹腔内圧)は、お腹の中の空間にかかる圧力のことです。お腹の前と横を囲む筋肉、上のふた(横隔膜)、下の底(骨盤底筋)に囲まれた空間の圧が高まると、体の中心に支えができます。

力学モデルを使った研究では、この腹腔内圧の仕組みによって、背中の筋肉を過剰に緊張させなくても腰の背骨の安定性を高められることが示されています(Cholewicki et al. 1999)。ただしこれは物理モデルによる検証であり、「腹圧を入れれば腰痛が治る」ことを示したものではありません。

腹圧そのものの基本や、ぽっこりお腹との関係はぽっこりお腹は太ったから?姿勢・腹圧・骨盤の意外な関係で詳しくご紹介しています。

ドローインとブレーシングの違い

ドローイン(お腹をへこませる)

おへそを背中側へ引き込むように、お腹を薄くする方法です。お腹のいちばん深い層にある筋肉(腹横筋)を選んで働かせることを狙います。力の大きさより、狙った場所を意識できるようにすることが目的の技法です。

ブレーシング(お腹周り全体を固める)

お腹を引き込まず、おなかに軽くパンチが来るのに備えるような感覚で、前・横・背中をぐるりと固めます。深い層だけでなく、外側の筋肉(腹斜筋・腹直筋)も一緒に働きます。重いものを持つ、踏ん張る、といった場面で使う形です。

圧の大きさには、はっきりした差があります

直腸内の圧センサーで腹腔内圧を測った実験では、安静時からの最大変化量がブレーシングで116.4±15.0 mmHg、ドローイン(ホローイング)で9.9±4.5 mmHg と、大きな差が報告されています(Tayashiki et al. 2016)。ただし対象は若い男性7名という小規模な研究で、40〜60代や女性、腰に不調のある方で同じ結果になるかは分かっていません。

また、背後から急に押されるような不意の外力に対しては、ドローインでは反応を抑えられず、ブレーシングでは腰の背骨のぶれが小さくなったという報告があります(Vera-Garcia et al. 2007)。ただしこの研究では同時に、ブレーシングによって背骨にかかる圧縮する力が増えるという代償も報告されています。「固めれば固めるほど安全」ではありません。

「どちらが優れているか」は決着していません

ここが、ネット上の情報といちばん食い違うところかもしれません。「ドローインは古い、これからはブレーシング」という説明を見かけますが、研究の側はそこまで言い切っていません

腰痛のある方と健康な方を対象にした22件のランダム化比較試験をまとめたレビューでは、両方の技法とも体幹の安定性・筋肉の厚み・バランス・歩行の改善を示した研究があるとしたうえで、両者を直接比較した研究が不足しており、どちらが同等に効果的かは明らかでないと結論づけられています(Golob et al. 2024)。研究間で一貫した結論は見られず、個別化されたアプローチが必要だと指摘されています。

読者の年代に近いデータもあります。腰痛のある高齢女性38名を対象に、5種類の体幹の運動を12週間・週3回、ドローインで行う群とブレーシングで行う群に分けた研究では、両群とも腰の痛みや動きにくさの指標が有意に改善した一方、群同士の差は統計的に有意ではありませんでした(Kim et al. 2018)。ただしこれは韓国での研究で、腹圧の入れ方だけを取り出した結果ではなく、運動プログラム全体の結果である点には注意が必要です。

さらに一歩引くと、体幹の深い筋肉に焦点を当てた運動(運動制御エクササイズ)は、何もしない場合と比べれば慢性腰痛に意味のある改善をもたらすものの、他の一般的な運動と比べると差は見られなかったというコクランレビューの結論もあります(Saragiotto et al. 2016)。短期的にはコアの運動が有利でも、6か月・12か月では一般的な運動との差が見られなくなったというメタアナリシスもあります(Wang et al. 2012)。

つまり、腹圧の入れ方は「万能の特効薬」ではなく、運動を続けるための土台の一つと考えるのが実際に近い受け止め方です。

ドローインのやり方

ステップ1|仰向けで膝を立てる

仰向けになり、両膝を立てます。腰と床の間には自然なすき間が残る位置にしてください。両手を骨盤の出っぱりの内側(下腹部)に軽く添えます。

ステップ2|息を吐きながらお腹を薄くする(5〜8回)

鼻から吸い、口から細く長く吐きます。吐ききるあたりで、おへそを背中側へ引き込むようにお腹を薄くします。添えた指の下で、薄い膜が張るような感触が出れば当たっています。強く押し込む必要はありません。

ステップ3|薄くしたまま呼吸を続ける(10〜20秒)

ここが本番です。お腹を薄くした状態を保ったまま、浅くてよいので呼吸を続けます。息が止まってしまう場合は、力の入れ方が強すぎます。半分の力に落としてください。

ブレーシングのやり方

ステップ1|おなかを固める感覚をつかむ

仰向けか、椅子に座った姿勢で行います。お腹に軽くパンチが来るのに備えるような感覚で、お腹の前・横・背中をぐるりと固めます。へこませないのがドローインとの違いです。脇腹に手を添えると、横に張り出す感触が分かりやすくなります。

ステップ2|固めたまま呼吸を続ける(10〜20秒 × 2〜3回)

固めた状態のまま呼吸を続けます。力の強さは、日常なら最大の2〜3割程度で十分です。全力で固める必要があるのは、重いものを持ち上げるような限られた場面だけです。

ステップ3|動きと組み合わせる(8〜10回×2セット)

固める感覚がつかめたら、動きに乗せます。仰向けで両膝を股関節の真上に上げ、腰と床のすき間を保ったまま片脚ずつ伸ばすデッドバグが入口として扱いやすい種目です。腰が浮いてしまう手前までにとどめてください。

呼吸は止めません

誤解されやすいのですが、ブレーシングは息を止める技術ではありません。健康な成人31名を対象にした研究では、持ち上げ動作の間も呼吸を続けるよう指示したうえでブレーシングが行われており、実施可能であることが確認されています。ただし力を入れている間は、一度に吸える・吐ける空気の量が有意に減ることも同時に報告されています(Sembera et al. 2023)。苦しく感じたら、力を緩めてかまいません。

一方で、息を吸って止めたまま力む(バルサルバ手技)は別物です。米国スポーツ医学会は、重量を持ち上げながら息を止めることで極めて高い血圧反応・めまい・失神が起こりうると注意を促しています。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」でも、筋力トレーニングの実施時は血圧の急激な上昇を抑えるため息をこらえないよう明記されています。血圧が気になる方は特に、呼吸を続けられる強さまで力を落としてください。

うまく入らないときに見ている3つのこと

ここからは研究で検証されたものではなく、TRADが現場で確認している順番です。「腹圧が入らない」とおっしゃる方には、次の3つが重なっていることがよくあります。

1. 息が止まっている

力を入れた瞬間に呼吸が止まる方は少なくありません。この状態では10秒ももちません。まず声を出しながらやってみると、止まっていることに気づきやすくなります。声が出せる強さが、続けられる強さです。

2. 肩と首に力が入っている

お腹に力を入れようとして、肩がすくみ、あごが上がる方がいます。この場合、お腹より先に上半身が働いてしまっています。肩を一度上げてから、ストンと落としてから始め直すと切り替えやすくなります。

3. 腰が反ったまま固めている

反り腰の状態で固めると、腰の反りごと固定してしまいます。腹圧を入れているつもりで、実際は腰の張りを増やしていることがあります。仰向けで腰と床のすき間が手のひら1枚分を大きく超えるようであれば、まず反りを戻す方向から始めてください。

40〜60代はどちらから始めるとよいか

ここも研究の結論ではなく、TRADの考え方としてお伝えします。運動が久しぶりの方には、ドローインから始めて、動きが伴う場面ではブレーシングに切り替えるという順番をご案内することが多くあります。理由は、ドローインのほうが力の加減を覚えやすく、呼吸を止めにくいためです。

ただしこれは「ドローインのほうが優れている」という意味ではありません。前述のとおり、どちらが優れているかは研究でも決着していません。体の状態と目的によって使い分けるのが実際です。腰に不調がある方、反り腰が強い方、呼吸が浅い方では、そもそも入り口が変わります。ご自身がどのパターンかを確かめるところから始めるのが確実です。

参考にした主な研究・ガイドライン

・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:筋力トレーニングについて(e-ヘルスネット
・American College of Sports Medicine「Exercise for the Prevention and Treatment of Hypertension」(2019)(ACSM公式
・Cholewicki et al.(1999)力学モデル研究/Journal of Biomechanics(PubMed
・Tayashiki et al.(2016)実験研究/International Journal of Sports Medicine(PubMed
・Vera-Garcia et al.(2007)実験研究/Journal of Electromyography and Kinesiology(PubMed
・Golob et al.(2024)スコーピングレビュー/Journal of Functional Morphology and Kinesiology(PubMed
・Kim et al.(2018)準実験研究/Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics(PubMed
・Saragiotto et al.(2016)システマティックレビュー(コクランレビュー)/Cochrane Database of Systematic Reviews(PubMed
・Wang et al.(2012)メタアナリシス/PLoS ONE(PubMed
・Sembera et al.(2023)横断研究/BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation

※本記事は運動指導・コンディショニングの観点からの一般的な情報です。腰の痛みが強い場合、しびれを伴う場合、血圧に不安がある場合は、運動の可否についてかかりつけの医療機関にご相談ください。

よくある質問

Q. ドローインとブレーシングは、どちらをやればいいですか?

どちらが優れているかは、22件のランダム化比較試験をまとめたレビューでも「直接比較した研究が不足しており明らかでない」とされています(Golob et al. 2024)。目的で使い分けるのが現実的です。狙った場所を意識する練習にはドローイン、重いものを持つなど踏ん張る場面ではブレーシングが使われます。

Q. 腹圧を入れる練習をすれば腰痛は治りますか?

「治る」とはお伝えできません。体幹の深い筋肉に焦点を当てた運動は、何もしない場合と比べれば慢性腰痛に意味のある改善をもたらすとされていますが、他の一般的な運動と比べた差は見られなかったというコクランレビューの結論があります(Saragiotto et al. 2016)。運動を続けるための土台の一つとお考えください。

Q. ブレーシング中は息を止めるのですか?

止めません。研究でも、持ち上げ動作の間に呼吸を続けながらブレーシングが行われています。ただし力を入れている間は一度に吸える空気の量が減ることも報告されています(Sembera et al. 2023)。息を吸って止めたまま力むこと(バルサルバ手技)は血圧の急上昇やめまいにつながるとされ、厚生労働省の運動ガイドでも息をこらえないよう注意されています。

Q. どのくらいの強さで力を入れればいいですか?

日常の動作であれば、最大の2〜3割程度で十分です。目安として、呼吸を続けられる強さ、声を出せる強さを保ってください。全力で固める必要があるのは、重いものを持ち上げるような限られた場面だけです。

Q. 力を入れているつもりですが、効いている感じがしません。

息が止まっている、肩と首に力が入っている、腰が反ったまま固めている——この3つが重なっていることがよくあります。まず声を出しながら行い、肩を一度上げて落としてから始め直し、仰向けで腰と床のすき間が広すぎないかを確認してみてください。それでも変わらない場合は、姿勢そのものを見直す必要があります。

お腹の力の入れ方を、その場で確かめる|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD

腹圧が入っているかどうかは、自分ではいちばん分かりにくい部分です。TRADは姿勢・動作の評価から始め、呼吸・骨盤の傾き・力の入り方を確認したうえで、いまのお体に合った順番でご案内しています。

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