椅子に座るとすぐ腰が丸まる、お尻が平たくなってきた、立っていると太ももの裏が突っ張る——こうした状態は骨盤が後ろに倒れている(骨盤後傾)と説明されることがあります。ただし最初にお伝えしておきたいことがあります。骨盤の傾きそのものと腰痛の関係は、研究では明確になっていません。それでも骨盤の向きを気にする意味はあります。この記事では、東海市・太田川駅徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、研究がどこまで言っているかを整理したうえで、座り方の見直しと自宅でできる3つのエクササイズをご紹介します。
要点まとめ
・骨盤後傾とは、骨盤が後ろに傾いて腰が丸まりやすくなっている状態を指します
・腰痛のある方とない方を比べた研究43件を集めたまとめのうち、立ったときの腰の反り具合を調べた8件の解析では差が見られませんでした(効果量0.01、Laird et al. 2014)
・骨盤の前後の傾き(3件の解析)についても統計的に意味のある差は確認されていません(同研究)
・一方で差がはっきり出たのは腰の動く範囲・動きの速さ・体の位置を感じ取る正確さでした
・つまり大切なのは「傾きの角度」より「動けるかどうか」です
・自宅でできるのは骨盤を前後に動かす練習・股関節から曲げる練習・お尻を働かせる練習の3つです
骨盤後傾とはどういう状態か
骨盤は左右の腰の骨と仙骨からなる、体の真ん中にある器のような構造です。この器が後ろへ傾くと、上に乗っている腰の骨(腰椎)の反りが減り、背中全体が丸まりやすい姿勢になります。これが骨盤後傾と呼ばれる状態です。
ご自身で気づきやすいのは、座っているときです。椅子に浅く腰かけて背もたれに寄りかかり、お尻が前へすべって腰が丸まる座り方が習慣になっている方は、骨盤が後ろに倒れた状態で長い時間を過ごしていることになります(デスクワークの座り方)。
反対に、骨盤が前に倒れて腰が反る状態は反り腰と呼ばれます。どちらが良い・悪いというより、どちらかに固まったまま動かせないことが問題になりやすい、というのがTRADの見方です。
研究はどこまで言っているか
「骨盤が後ろに倒れているから腰が痛くなる」という説明を目にすることがありますが、ここは正確にお伝えしておきます。
腰痛のある方とない方の腰と骨盤の動きを比べた研究を集めた43件のまとめ(システマティックレビュー・メタアナリシス)では、次のように報告されています(Laird et al. 2014)。
・立ったときの腰の反り具合(8件の研究)……両群の差は効果量0.01(95%信頼区間 −0.09〜0.11、p=0.89)で差なし
・立ったときの骨盤の傾き(3件の研究)……効果量0.24(同 −0.03〜0.50、p=0.08)で統計的に意味のある差とは言えない
一方で、明確な差が出た項目があります。
・腰の動く範囲……前屈・後屈・横曲げ・回旋のすべてで腰痛のある方のほうが小さい
・体の位置を感じ取る正確さ(固有感覚)……効果量1.04と大きな差
・動きの速さ……効果量−1.24で、腰痛のある方はゆっくり動く
まとめると、止まっているときの形(アライメント)より、動きの質のほうに差が出ているということです。ただしこの研究は、それらの違いが腰痛の前からあったのか、腰痛の結果として生じたのかは分からないとも明記しています。原因と決めつけることはできません。
そのためTRADでは、「骨盤の角度を正しい位置に矯正する」という考え方はとっていません。見ているのは、その方が骨盤を前にも後ろにも自分で動かせるか、そして座る・立ち上がる・歩くという実際の動きの中でどう使えているかです。
セルフチェック(座ってできます)
1. 坐骨を感じられますか
硬めの椅子に浅く腰かけ、お尻の下に手のひらを入れてみてください。左右にゴツゴツした骨(坐骨)が当たります。この骨の真上に上体が乗っている感覚があるかどうかを確かめます。骨が後ろにずれて、尾てい骨のあたりで座っている感じがあれば、骨盤が後ろに倒れています。
2. 骨盤を前後に動かせますか
座ったまま、腰を反らせる方向(骨盤を前に倒す)と、腰を丸める方向(骨盤を後ろに倒す)へ、ゆっくり交互に動かしてみてください。どちらか一方にしか動かない、片方が明らかにやりにくい場合、その方向の動きが苦手になっています。角度より、この動かしやすさのほうが大切な情報です。
3. 立って壁に背中をつけたとき
かかとを壁から少し離して立ち、お尻と背中を壁につけます。腰と壁のすき間に手のひらを差し入れてみてください。手のひらがほとんど入らない場合は腰の反りが少ない状態です。ただしこれだけで良し悪しは決められません。左右差や動きと合わせて見るものだとお考えください。
自宅でできる3つのエクササイズ
1|骨盤ロッキング(座って10往復)
椅子に浅く腰かけ、両足を床につけます。息を吐きながら骨盤を後ろへ倒して腰を丸め、息を吸いながら骨盤を前へ倒して腰を軽く反らせます。この前後の往復をゆっくり10回行います。反動は使わず、上体は大きく揺らしません。目的は骨盤を「動かせる範囲」を取り戻すことです。
2|ヒップヒンジ(8〜10回×2セット)
骨盤を後ろに倒したまま固まっていると、物を拾う・靴を履くといった動作を腰を丸めて代用するようになります。股関節から折り曲げる動きを取り戻す練習がヒップヒンジです。膝を軽く曲げ、お尻を後ろへ引きながら上体を前に倒します。腰は丸めず、胸からお尻までまっすぐを保ちます。
3|ヒップリフト(10回×2セット)
仰向けで膝を立て、お尻を持ち上げます(ヒップリフトの正しいやり方)。骨盤が後ろに倒れた姿勢が長い方は、お尻の筋肉が働く機会そのものが減っていることがあります(お尻の筋力低下と腰)。腰を反らせて持ち上げるのではなく、お尻の力で押し上げてください。
3つ合わせて10分ほどです。毎日行う必要はなく、週3〜4日、できる日にで構いません。
座り方でできること
エクササイズ以上に効くことがあるとすれば、それは同じ姿勢で座り続けないことです。上の研究で差が出たのは動きの範囲と速さでした。裏を返せば、ときどき動かすことのほうが理にかなっています。
・椅子に深く腰かけ、坐骨の上に座る
・骨盤が後ろに倒れてしまう方は、お尻の後ろ側に薄いクッションやたたんだタオルを敷く
・30〜60分に一度は立ち上がります。それだけで骨盤の位置は入れ替わります
・完璧な姿勢を保ち続けようとしない(力み続けるほうが疲れます)
こんなときは無理をしないでください
・お尻から脚にかけてのしびれ・痛みがある
・前に体を倒すと脚に痛みが走る
・安静にしていても痛みが続く、夜間に痛みで目が覚める
・急に姿勢が丸くなってきた、身長が明らかに縮んだ
これらに当てはまる場合、骨盤や座り方の問題としてご自身で対処するのは避けてください。腰の神経や骨の状態が関わっていることがあります。まず医療機関にご相談ください。
参考にした主な研究・ガイドライン
・Laird et al.(2014)システマティックレビュー・メタアナリシス/BMC Musculoskeletal Disorders(PubMed)
よくある質問
Q. 骨盤が後ろに倒れていると腰痛になりますか?
そう言い切れる根拠はありません。腰痛のある方とない方を比べた43件の研究をまとめた解析では、立ったときの腰の反り具合(効果量0.01)も骨盤の傾き(同0.24)も、統計的に意味のある差は確認されませんでした(Laird et al. 2014)。一方で腰の動く範囲・動きの速さ・体の位置を感じ取る正確さには差が出ています。角度そのものより、動かせるかどうかに目を向けるほうが実用的です。
Q. 骨盤後傾は自分で治せますか?
「正しい角度に矯正する」という考え方はおすすめしていません。目指したいのは、骨盤を前にも後ろにも自分で動かせる状態です。座ったまま骨盤を前後にゆっくり10往復させる練習、股関節から曲げるヒップヒンジ、お尻を働かせるヒップリフトの3つが自宅で行える基本です。週3〜4日、10分程度から始めてください。
Q. 骨盤後傾と反り腰、どちらが悪いのですか?
どちらが悪いというものではありません。問題になりやすいのは、どちらかの形に固まったまま動かせないことです。座り続ける時間が長い方は後ろに倒れた状態で、立ち仕事の多い方は反った状態で固まりやすい傾向があります。ご自身がどちらの方向に動かしにくいかを確かめることから始めてください。
Q. 座るときにクッションを使ったほうがいいですか?
骨盤が後ろに倒れてしまう方は、お尻の後ろ側に薄いクッションやたたんだタオルを敷くと、坐骨の上に座りやすくなります。ただし道具で形を作ることが目的ではありません。それ以上に効果的なのは、30〜60分に一度立ち上がることです。研究で差が出たのは動きの範囲と速さでしたので、ときどき動かすほうが理にかなっています。
Q. お尻が平たくなってきたのは骨盤のせいですか?
骨盤の傾きだけが理由とは限りません。座っている時間が長く、お尻の筋肉が働く機会そのものが減っていることも関係します。ヒップリフトやヒップヒンジのように股関節を使う運動を週3〜4日取り入れると、お尻を使う感覚が戻ってくる方が多くいらっしゃいます。見た目の変化だけでなく、立ち上がりや歩行の安定にもつながる部分です。
骨盤の動きを実際に見てから|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
TRADは、鍛える前に姿勢・動作を評価するところから始めるパーソナルジムです。骨盤が動かしにくい理由は、股関節・胸まわり・足元のどこにあるかで進め方が変わります。角度を矯正するのではなく、動かせる範囲を取り戻すところから組み立てています。
姿勢カウンセリング付きの無料体験を受付中です。その場での即決はお願いしていませんので、じっくりご検討ください。
TRADパーソナルコンディショニングジム
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