運動の前に何をすればいいのか。ストレッチでいいのか、それは逆効果だと聞いたことがあるけれど本当なのか。先に結論をお伝えします。順番は「温める→関節を動かす→使う筋肉を働かせる→本番の動きを軽く」の4段階です。そして静的ストレッチ(じっと伸ばす)は、やめる必要はありません。研究をまとめたレビュー自身が、「ストレッチのあとに動く活動を入れるウォームアップ」を推奨しています。この記事では、東海市・太田川駅から徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、原典の数字を示しながら手順をご説明します。
要点まとめ
・順番は①体温を上げる ②関節を動かす ③使う筋肉を働かせる ④本番の動きを軽くの4段階です
・静的ストレッチ直後のパフォーマンスは平均−3.7%。ただし1つの筋に60秒以上かけると−4.6%、60秒未満なら−1.1%にとどまります(Behm et al. 2016)
・🔑 同じレビューでストレッチのあとに動く活動を入れた場合は、はっきりした影響が見られませんでした。つまり「やめる」より「あとに動く」です
・動的ストレッチ(動かしながら)は+1.3%でした(同研究)
・筋温が1℃上がると、短時間の運動のパフォーマンスは2〜5%向上します(Racinais & Oksa 2010)
・筋温はウォームアップ中に1分あたり約0.1℃上がり、動かずにいると同じペースで下がります(Kapnia et al. 2023)。準備運動と本番の間を空けないことが大切です
・ケガ予防の効果は、対象によって結論が違います。「準備運動をすればケガをしない」とは言えません(詳しくは本文)
・⚠️ 40〜60代の運動初心者を対象にウォームアップを検証した研究は、今回見つかりませんでした
ウォームアップは何のためにするのか
まず公的な資料の書き方を確認します。厚生労働省のe-ヘルスネット「運動実施時のけが・事故の予防と対策」には、ウォームアップの目的が4つ挙げられています。原文のままご紹介します。
・運動中の傷害、内科的事故の発生・発症の予防
・運動パフォーマンスの向上
・主運動に対する心理的準備
・運動実施者の体調の把握
4つ目に注目してください。「体調の把握」です。準備運動は、体を温めるためだけのものではありません。今日の自分の体がどう動くかを確かめる時間でもあります。膝が重い、肩が上がりにくい、といったことに気づけば、その日の内容を変えられます。TRADがここを大切にしているのは、この理由です。
なお同じページには時間の記載もあります。ただし条件がついています。原文は「競技スポーツのためのトレーニングなど、高強度の運動を定期的に行う場合は、運動実施前や日々の健康状態の確認に加えて、運動前後に適切なウォームアップ・クールダウンを実施することが重要です」とあり、そのうえで「けがや事故の予防のために、15分程度のウォームアップを実施する必要があります」と書かれています。
つまり15分という数字は、競技スポーツや高強度の運動を定期的に行う方に向けたものです。「散歩に行くのに15分の準備運動が必要」という話ではありません。ここを混同した説明をよく見かけますので、あえて条件ごと引用しました。
順番は4段階です
スポーツの現場では、この4段階を並べた組み立てが使われます。頭文字をとってRAMPと呼ばれることがあります。
1. 体温を上げる
その場での足踏み、軽い早歩き、自転車こぎなど、息が少し上がる程度の動きを続けます。汗が出る必要はありません。体が内側から温かくなってきた感じが目安です。
2. 関節を動かす
止まって伸ばすのではなく、動かしながら可動域を広げます。肩を回す、腕を前後に振る、腰をひねる、股関節を前後左右に振る、足首を回す。それぞれ10回程度で十分です。
3. 使う筋肉を働かせる
これから使う場所に軽く力を入れておきます。スクワットをするなら、お尻を軽く締める動きや、ヒップリフトを軽く数回。上半身の日なら、肩甲骨を寄せる・押し出す動きを数回です。疲れるまでやりません。
4. 本番の動きを軽く行う
これから行う種目そのものを、軽い負荷か自分の体重だけで数回行います。スクワットなら、まず何も持たずに5回。ここでフォームの確認も済みます。
この順番には理由があります。温まっていない体で急に関節を大きく動かすと、可動域の端で無理がかかりやすいためです。①と②を逆にしないことだけ覚えていただければ十分です。
若い男子サッカー選手14名を対象にした無作為化のクロスオーバー試験では、この段階的なウォームアップを行った条件が、静的ストレッチのみの条件(効果量0.41)や何もしない条件(効果量0.52)よりも、30m走と垂直跳びの成績が良かったと報告されています(Girginer et al. 2025)。⚠️ ただし対象は16〜22歳の男子サッカー選手14名ですので、40〜60代の方にそのまま当てはめることはできません。なお同じ研究では、静的ストレッチのみの条件と、何もしない条件との間には目立った差が見られませんでした。「静的ストレッチをすると、何もしないより悪くなる」という結果ではなかったことも、あわせて記しておきます。
静的ストレッチは運動前にやってはいけないのか
ここがいちばん誤解の多いところです。「運動前の静的ストレッチは逆効果」と広く言われていますので、元になった研究を確認します。
健康で活動的な方を対象にした研究を集めたシステマティックレビュー(Behm et al. 2016)では、ストレッチ直後のパフォーマンス変化が次のように報告されています。
・静的ストレッチ −3.7%
・動的ストレッチ +1.3%
・PNFストレッチ −4.4%
そして量による違いが示されています。1つの筋群に60秒以上かけた場合は−4.6%、60秒未満なら−1.1%でした。つまり短い時間であれば低下はごくわずかです。
🔑 ここから先が、あまり紹介されていない部分です。このレビューは「多くの研究はストレッチ後に動く活動を含めていなかった。これらの活動が含まれた場合、はっきりしたパフォーマンスへの影響は認められなかった」と述べています。そして結論として「ストレッチ後に動的な活動を加えるウォームアップは、筋のケガを減らし関節の可動域を高めるために推奨され、その後の競技パフォーマンスへの影響は重要でない」としています。
つまり研究のまとめが言っているのは「静的ストレッチをやめなさい」ではありません。「静的ストレッチをして、そのあと動きなさい」です。先ほどの4段階で言えば、静的ストレッチを②のあたりに短く入れて、③④で動きます。これで問題になりません。
もうひとつ知っておくとよいのは、ストレッチで広がった可動域は30分未満で戻るとこのレビューが報告していることです。ですので朝に伸ばして夕方に運動するのでは、可動域の面では意味が薄くなります。運動の直前に行うほうが理にかなっています。ストレッチと筋トレの順番そのものについてはストレッチと筋トレ、どちらを先にやるべき?で詳しくご説明しています。
温まると何が変わるのか
「温める」の意味を数字で見てみます。温度と神経・筋の働きをまとめたレビューでは、短時間の運動では、筋温が1℃上がるとパフォーマンスが2%から5%向上すると報告されています(Racinais & Oksa 2010)。ただし体の中心の温度が上がりすぎる(高体温になる)と、この関係は成り立たなくなり、逆に performance は落ちます。温めればいいという単純な話ではありません。
では何分で温まるのか。20分の自転車こぎによるウォームアップを調べた研究では、筋温はウォームアップ中に1分あたり平均約0.1℃上がり、そのあと動かずに休んでいる間は同じペースで下がったと報告されています(Kapnia et al. 2023、26名)。上がり方も下がり方も、それぞれの期間の最初のほうが大きかったとのことです。
🔑 この研究のもう一つの結果が、実務ではとても大事です。同じ研究の2つ目の実験で、ウォームアップ後に9分間動かずにいると反動跳躍の高さが3.8%低下し、23分間だとレイアップの得点が7.3%低下しました。⚠️ こちらはプロのバスケットボール選手6名という極めて小さな規模ですので、数字の大きさを鵜呑みにはできません。それでも方向は明確です。
実際の行動に落とすとこうなります。準備運動を終えたら、すぐに本番を始めてください。着替えに行く、スマートフォンを見る、動画を探す。その数分で、せっかく上げた筋温は下がっていきます。
2つの研究を並べると、筋温を1℃上げるには10分前後の軽い運動が必要という計算になります。⚠️ ただしこれは別々の研究をつなげた目安であって、「10分やれば2〜5%上がる」と検証されたものではありません。
ケガの予防になるのか|ここは対象で結論が変わります
いちばん正直に書かなければならない部分です。「準備運動はケガ予防のため」とよく言われますが、研究の状況は単純ではありません。
ストレッチだけではケガは減りませんでした。BMJに掲載されたシステマティックレビュー(Herbert & Gabriel 2002)では、軍の新兵を対象にした2つの研究をまとめた結果、運動前のストレッチは実用的なケガのリスク低下をもたらさなかったと報告されています(ハザード比0.95、95%信頼区間0.78〜1.16)。運動後の筋肉痛についても、100mmのものさしで0.9mm(同 −2.6〜4.4mm)という差しかなく、意味のある減少とは言えませんでした。
ストレッチ以外を含むウォームアップでは、結果が分かれています。無作為化比較試験だけを集めたレビュー(Fradkin et al. 2006)では、質の高い5件のうち3件でケガのリスクが有意に低下し、2件では有意な減少が見られませんでした。結論は「ルーチンのウォームアップを推奨する、あるいは中止するには証拠が不十分。ただし証拠の重みはリスク低下の方向にある」という慎重なものです。
しっかり組み立てられたプログラムでは、はっきりした効果が報告されています。サッカーのFIFA 11+という構造化されたウォームアッププログラムについて、5件の比較試験をまとめた2025年のレビューでは、ケガの発生が約30%から46%減少したと報告されています(Patel & Shah 2025)。⚠️ ただし対象はユース・大学・成人のサッカー競技者に限られ、研究間のばらつきが大きいため統計的な統合はされていない(記述的にまとめられた)点に注意が必要です。そして効果を決めた最大の要因は「続けたかどうか」だったとされています。
🚨 そして今回、40〜60代の運動初心者を対象にウォームアップの効果を検証した研究は見つかりませんでした。ですのでTRADは「準備運動をすればケガをしません」とは申し上げません。言えるのは、温まった体のほうが動かしやすく、その日の状態にも気づけるので、やっておく理由はあるということまでです。
40〜60代の方の、実際の手順(5〜10分)
ここまでを踏まえて、ご自宅で運動される前の手順を具体的にまとめます。⚠️ この時間配分は研究で検証されたものではなく、これまでの数字をもとにした実務上の目安です。
① その場で足踏み 2〜3分
腕も一緒に振ります。息が少し上がり、体が内側から温かくなるまで。寒い時期は長めに取ってください。
② 関節を動かす 2〜3分
肩を大きく回す10回/腕を前後に振る10往復/その場で腰をひねる10往復/脚を前後に振る左右10回ずつ/足首を回す左右10回ずつ。反動で強く振り回さず、動く範囲の中でゆっくり大きく動かします。
③ 硬いところを短く伸ばす 1〜2分(入れても構いません)
気になる場所があれば、1か所20〜30秒までにしてください。研究の数字からは、1つの筋に60秒以上かけると低下が大きくなります。そして伸ばしたあとは必ず④に進んで動くことが条件です。
④ 本番の動きを軽く 1〜2分
これから行う種目を、負荷なしで5回程度。ここでフォームを確認します。
⑤ すぐ本番に入る
ここで間を空けないでください。飲み物の準備や着替えは、準備運動の前に済ませておきます。
運動の強さの目安については運動の強さの目安にまとめてあります。会話ができる程度から始めていただければ十分です。
やらないほうがよいこと
反動をつけて強く伸ばす
勢いで伸ばすと、動く範囲の端で急に引っ張られます。動かしながら広げるのと、勢いで押し込むのは別のものです。
痛みのあるところを伸ばして何とかする
伸ばすと痛い、動かすと刺すように痛む場合は、準備運動で解決しようとせず、いったんやめてください。
温まらないうちに大きく動かす
順番の①を飛ばして②から始めるのは避けます。寒い部屋や朝いちばんは、とくに①を長めに取ってください。
準備運動で疲れてしまう
③で強く力を入れすぎたり、④で回数を重ねると、本番の前に疲れます。準備運動は「目覚まし」であって「練習」ではありません。
なお、TRADが行うのは運動指導・コンディショニングです。痛みの原因を特定したり、症状を治したりすることはできません。痛みが続く場合や治療中のご病気がある場合は、運動の内容について主治医にご相談ください。
東海市のTRADでは、準備の時間をこう使っています
TRADのセッションでも、最初の数分は同じ組み立てで進みます。ただし内容はその日ごとに変わります。e-ヘルスネットの目的の4つ目、「体調の把握」に一番時間を使っていると言ってもいいかもしれません。
前回よりしゃがみが浅いこと、片脚立ちが左だけぐらつくこと、肩の上がり方が違うこと。準備の段階でこうしたことが見えると、その日のメニューを組み替えます。決めてきた内容をそのままやるより、目の前の体に合わせるほうが結果が出ます。
ご自宅で運動される方にも、この考え方はそのまま使えます。準備運動をしながら「今日はどこが動きにくいか」を見てください。それが分かるだけで、無理をする日が減ります。
疲れが残っている日に動くか休むかはアクティブレスト(積極的休養)の効果とやり方で、研究で言えることを整理しています。
よくある質問
Q. 運動前に静的ストレッチをするのは逆効果ですか。
「やめたほうがよい」とまでは言えません。システマティックレビューでは静的ストレッチ直後のパフォーマンスは平均−3.7%ですが、1つの筋群に60秒未満であれば−1.1%にとどまります。さらに同じレビューは、ストレッチのあとに動く活動を入れた場合はっきりした影響は認められなかったとし、結論として「ストレッチ後に動的な活動を加えるウォームアップ」を推奨しています。ですので1か所20〜30秒までにして、そのあとに軽く動く流れにしていただければ問題になりません。
Q. 準備運動は何分やればいいですか。
厚生労働省のe-ヘルスネットには15分程度という記載がありますが、これは「競技スポーツのためのトレーニングなど、高強度の運動を定期的に行う場合」という条件つきの数字です。一般の方が自宅で運動する場合の適切な時間を直接検証した研究は、今回見つかりませんでした。目安としては、筋温が1分あたり約0.1℃上がるという報告から、5〜10分の軽い運動で体が温まってくるとお考えください。汗をかく必要はありません。
Q. 準備運動をすればケガをしませんか。
そう言い切ることはできません。ストレッチだけを調べた研究では、軍の新兵を対象にした2件のまとめでケガのリスクは実用的に下がりませんでした(ハザード比0.95)。ストレッチ以外を含むウォームアップでは、質の高い5件のうち3件で低下し2件では差がなく、レビューの結論は「証拠は不十分だが、重みは低下の方向にある」というものです。サッカーのFIFA 11+のような構造化されたプログラムでは約30〜46%の減少が報告されていますが、対象は競技者に限られます。40〜60代の運動初心者を対象にした研究は見つかりませんでした。
Q. ウォームアップしてから少し休んでもいいですか。
できるだけ空けないほうがよいと考えられます。20分のウォームアップ後に動かずにいると、筋温が1分あたり約0.1℃のペースで下がったという報告があります。同じ研究では、9分間の不活動のあとに反動跳躍の高さが3.8%、23分間のあとにレイアップの得点が7.3%低下していました。ただしこちらはプロのバスケットボール選手6名という小さな規模ですので、数字そのものは参考程度にお考えください。飲み物や着替えの準備は、準備運動の前に済ませておくのが確実です。
Q. 散歩やウォーキングの前にも準備運動は必要ですか。
歩くこと自体が軽い運動ですので、最初の数分をゆっくり歩くことで準備運動を兼ねられます。改めて別のことをする必要はありません。歩き始めからいきなり速く歩くのではなく、最初の3〜5分はゆっくり、そこから普段の速さに上げていく形で十分です。坂道や階段が最初にある道を選ぶ場合は、平らなところで数分歩いてから向かうほうが体に無理がかかりません。
参考にした主な研究・ガイドライン
・厚生労働省 e-ヘルスネット「運動実施時のけが・事故の予防と対策」(kennet.mhlw.go.jp)
・Behm DG et al.(2016)システマティックレビュー/Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism(PubMed)
・Racinais S & Oksa J(2010)レビュー/Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports(PubMed)
・Kapnia AK et al.(2023)実験研究/Research Quarterly for Exercise and Sport(PubMed)
・Herbert RD & Gabriel M(2002)システマティックレビュー/BMJ(PubMed)
・Fradkin AJ et al.(2006)システマティックレビュー/Journal of Science and Medicine in Sport(PubMed)
・Patel P & Shah M(2025)システマティックレビュー/Cureus(PubMed)
・Girginer FG et al.(2025)無作為化クロスオーバー試験/Frontiers in Physiology(PubMed)
姿勢評価つきの体験を受付中|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
準備運動でその日の体に気づけるようになると、無理をする日が減ります。TRADは、鍛える前に姿勢・動作を評価してから進める完全個室のパーソナルジムです。月会費なしの回数券制ですので、忙しい月があっても無駄になりません。太田川駅から徒歩4分、駐車場もございます。姿勢評価つきの体験トレーニング(90分)は2,750円(税込)です。ご予約後にお送りするご確認メールから、事前にお支払いいただけます。
その場でのご契約はお願いしていません。内容を見たうえで、じっくりご検討ください。ご予約は公式LINE、または予約サイト(空き状況を見る)から承っています。

