階段を降りるのが怖いのはなぜ?|筋力より「痛みへの不安」で説明できたという研究|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD

「階段を降りるのが怖いのはなぜ?|筋力より痛みへの不安で説明できたという研究」と書かれた記事のサムネイル|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD

階段を降りるときに手すりを探してしまう、上るのは平気なのに降りるほうが怖い、膝が痛むわけではないけれど足が前に出ない——こうしたご相談をよくいただきます。先に、研究で分かっていることを2つお伝えします。1つは「階段の下りは上りの3倍の負担」という言い方が、実際に膝の中で測った数値とは合わないことです。もう1つが重要で、膝に痛みのある方を調べた研究では、「階段を降りるのが難しい」という感覚を最も強く説明したのは、筋力でも動作の癖でもなく「痛みへの恐怖」でした。この記事では、東海市・太田川駅から徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、原典の数字とともにご説明します。

要点まとめ

・膝の中に力を測る装置を入れて実測した研究では、階段を降りるとき346%(体重比)、上るとき316%、平地歩行261%でした(Kutzner et al. 2010)
・つまり下りは上りより約1割高いだけで、「3倍」という説明の出どころは確認できませんでした
・膝の変形性関節症のある方28名を調べた研究では、「降りるのが難しい」という自己評価を最も強く説明したのはキネシオフォビア(動きや痛みへの恐怖)でした(β=0.607)
・🔑 同じ研究で、動作パターンと筋力の指標は、その難しさを説明しませんでした(Stensdotter et al. 2023)
・膝・股関節の変形性関節症のある方7,442名では、転倒への懸念が中程度の方が48.1%、高い方が11.3%でした(Grønne et al. 2024)。珍しいことではありません
・⚠️ 「ゆっくり降りる練習」と、機器を使った最大努力のエキセントリック訓練は別物です。後者は膝の変形性関節症のある方で重大な有害事象が25%という報告があります(Coudeyre et al. 2024)
・厚生労働省の情報シートは、状態が落ち着いていれば運動をすすめる一方、「運動器の痛みや変形がある場合は事前に医師等の専門家に相談する」としています

「下りは上りの3倍」は、実測と合いません

まずこの通説を片付けておきます。階段の下りについて「膝には体重の3倍かかる」「上りの3倍」といった説明を目にすることがあります。

膝の中で実際に測った研究があります。人工膝関節に力を測る装置を組み込んだ5名を対象に、日常動作ごとの関節にかかる力を測定したものです。体重に対する割合で、ピーク値は次のとおりでした(Kutzner et al. 2010)。

・階段を降りる 346%
・階段を上る 316%
・平地を歩く 261%
・片脚で立つ 259%
・膝を曲げる 253%
・椅子から立ち上がる 246%
・椅子に座る 225%
・両脚で立つ 107%

確かに降りるときがいちばん高いのですが、上るときとの差は約1割です。3倍ではありません。そして平地歩行と比べても1.3倍程度です。今回、「下りは上りの3倍」という数字の原典を探しましたが、確認できませんでした。

⚠️ この研究の限界も申し上げておきます。対象は5名だけで、しかも人工膝関節を入れている方です。膝の構造が違いますので、この数字をそのまま一般の方に当てはめることはできません。上りと下りの負荷を体内で比べたデータとしては貴重ですが、絶対値を強調するのは適切ではありません。

ここからお伝えしたいのは、「下りは特別に危険な動作」と思い込む必要はないということです。上りとの差は、思われているより小さいのです。上るときの膝の痛みについては階段を上ると膝が痛い原因でご説明しています。

では、なぜ降りるほうが怖いのか

ここが今回いちばんお伝えしたい研究です。膝の変形性関節症のある方28名(平均62.2歳)と、対照群31名を比べた研究があります(Stensdotter et al. 2023)。

まず群の比較では、膝に症状のある方は下肢全体の動きのパターンが異なり、片脚で支える時間が長く、筋力が低いという結果でした。ここまでは想像どおりです。

🔑 ところが、症状のある方の中で「階段を降りるのがどれくらい難しいか」という自己評価を説明する要因を分析したところ、最も強く関連していたのはキネシオフォビア(動くこと・痛むことへの恐怖)でした(β=0.607、p=.001)。これに直近1週間の痛みとレントゲン所見を加えると、ほぼ全部を説明できるという結果になりました(β=0.972)。

そして重要なのはこちらです。対照群との差が出ていた動作のパターンや筋力の指標は、自己評価の難しさを説明しませんでした。

⚠️ この研究の限界を並べておきます。28名という小さな規模です。段階的に変数を選ぶ分析方法なので、当てはまりの良さ(ほぼ100%)は過大に出やすいことに注意が必要です。対照群の平均年齢が50.0歳で、症状のある方より12歳ほど若い点も差の解釈に影響します。そして横断研究ですので、「怖いから難しくなった」のか「難しいから怖くなった」のかは分かりません。

それでも、この結果は現場の感覚と一致します。筋力を測れば十分あるのに、降りるのが苦手な方は実際にいらっしゃいます。逆に、筋力がそれほど高くなくても平気で降りる方もいます。筋力の数字だけでは説明がつかないということです。

転倒への不安は、珍しいことではありません

「怖いと感じるのは自分だけではないか」と気にされる方がいらっしゃいますので、規模の大きな調査もご紹介します。

膝または股関節の変形性関節症で医療機関にかかっている7,442名(平均67歳・67%が女性)を調べた研究では、転倒への懸念を測る指標で中程度の懸念がある方が48.1%、高い懸念がある方が11.3%でした(Grønne et al. 2024)。年齢が高い方と女性で多く見られました。

痛みの強さ、椅子から立ち上がるテストの成績、動くことへの恐怖が、この懸念と有意に関連していました。ただし著者自身が「関連の因果関係は今後の検討課題」と明記しています。

つまりおよそ半数の方が何らかの懸念を持っているということです。怖いと感じることは、気の弱さでも思い込みでもありません。

降りることに慣れていくための3つの手順

怖さが関わっているのなら、対策も変わります。力を鍛えるだけでは足りません。「怖くない条件で成功する経験」を積むほうが、順番として先です。

1. 段の高さを下げる

いきなり普通の階段で練習しないでください。雑誌を数冊重ねた程度の低い段差、玄関の上がり框、公園の縁石など、降りても怖くない高さから始めます。ここで手をつかずに降りられるようになってから、段を高くしていきます。

ご自宅の階段で行う場合は、いちばん下の1段だけを使ってください。下に段がないので、失敗しても大きなことになりません。これだけで恐怖感がかなり下がります。

2. 手すりは使ってください

「手すりに頼らないようにしている」という方が多いのですが、順番が逆です。手すりを持って安心して降りられる状態を先に作り、そのあとで指2本だけ添える→手を離して構える→使わないと段階的に減らします。

怖いまま手を離して練習すると、体が固まって余計に不安定になります。手すりは練習の邪魔ではなく、練習を成り立たせる道具だとお考えください。

3. 速さを自分で決められる状態にする

怖さが強い方の共通点は、降りる速さを自分で選べていないことです。勢いで足が出てしまい、途中で止まれないという状態です。これでは、何段降りても不安は減りません。

ですので、1段ごとに止まれるかどうかを確認してください。降りて、止まる。また降りて、止まる。止まれる速さが、今のあなたの安全な速さです。慣れてくると自然に速くなります。

⚠️ 誰かが後ろに並んでいると、この速さを選べなくなります。駅やお店の階段では、急がなくてよい端を選び、譲ってしまうほうが確実です。太田川駅にもエレベーターがあります。使うことは後退ではありません。

支える力そのものを鍛える運動については階段の上り下りがきつい50代へとスプリットスクワットのやり方にまとめてあります。ご自身の段階が分かりにくい場合はロコモ度テストのやり方で確認してみてください。

⚠️「ゆっくり降りる練習」と「エキセントリック訓練」は別物です

ここは誤解されると危ないので、はっきり分けておきます。

降りる動作では、筋肉が伸ばされながら力を出します(伸張性収縮・エキセントリック収縮)。この性質を利用したトレーニングがあり、「エキセントリックは効率がよい」という説明も見かけます。

ところが、膝の変形性関節症のある方38名(平均57.7歳・40〜70歳)を対象にした無作為化比較試験では、等速性の機器を使った最大努力のエキセントリック訓練を6週間で12回行ったところ、エキセントリック群で重大な有害事象が25%に発生しました。筋力の伸びについても、コンセントリック(縮みながら)群のほうが大きく、統計的な差はありませんでした(Coudeyre et al. 2024)。論文のタイトルは「膝の変形性関節症において、最大収縮を用いたエキセントリック筋力強化は有害である」というものです。

🚨 ただしこれは専用の機器で最大努力を出す訓練の話です。低い段差を自分の体重でゆっくり降りる練習とは、負荷の大きさがまったく違います。「エキセントリックは危険だから降りる練習をしてはいけない」という結論にはなりません。

お伝えしたいのは、膝に症状があるときに、強い負荷のエキセントリックへ急に進まないほうがよいということです。段差を低くして回数を抑える。この慎重さには根拠があります。

膝の痛みがあるとき、階段を避けるべきか

厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート「慢性疾患を有する人の身体活動のポイント」を確認しました。原文のままご紹介します。

対象については「高血圧、2型糖尿病、脂質異常症、変形性膝関節症を有する人で、かつ状態が落ち着いている人が対象である」とあります。そのうえで「まずは、患者等が現状を知り、無理のない強度・頻度で始めて、徐々に増やしていくことが重要である」、「筋力トレーニングを週2〜3日行うことを勧める」と書かれています。

いっぽうで注意も明記されています。「身体活動によって悪化する可能性のある合併症・運動器の痛みや変形がある場合があるため、事前に医師等の専門家に相談する」。

読み取れることは2つです。状態が落ち着いていれば、動かないほうがよいという考え方はとられていません。そして痛みや変形がある場合は、自己判断で進めず先に相談するということです。

先に整形外科へ、とお伝えしている場合

TRADでは、次のような状態でお越しになった方には、運動より先に医療機関へのご相談をお願いしています。診断ではなく、こちらでお引き受けする範囲を超えているという判断です。

・膝が引っかかって伸びきらない、または途中で動かなくなる
・急に腫れた、熱をもっている
・夜、寝ているときも痛む
・体重をかけると痛くて立てない・歩けない
・転んだあとから痛みが出ている

TRADが行うのは運動指導・コンディショニングです。痛みの原因を特定したり、症状を治したりすることはできません。受診されたうえで運動の許可が出れば、その範囲でご一緒できます。

東海市のTRADでは、降りる動作をこう見ています

セッションでは、階段や台を降りていただくところを実際に見ます。見ているのは膝だけではありません。

確認するのは、足首が十分に曲がるか・支える脚のお尻が働いているか・体が横に流れないか・そして「どのくらい怖そうか」です。最後の1つを言葉でうかがうのも評価の一部です。「怖いですか」「どこで怖くなりますか」と聞きます。

降りる直前で止まる方、目線が足元に落ちる方、息を止める方。こうした様子が見えたら、その日は段を低くします。強い負荷で押し切っても、次の日に一人で階段の前に立ったときに何も変わっていません。膝以外の要因については膝の痛みは膝以外が原因のことが多い理由でもご説明しています。

完全個室ですので、うまくできない様子を人に見られる心配がありません。怖さが関わる課題では、この環境自体が効いてくると考えています。

よくある質問

Q. 階段の下りは上りの3倍、膝に負担がかかるのですか。

その数字の出どころは確認できませんでした。膝に測定装置を組み込んで実測した研究では、体重に対するピーク値が階段を降りるとき346%、上るとき316%、平地歩行261%でした。降りるときがいちばん高いものの、上るときとの差は約1割で、3倍ではありません。ただしこの研究は人工膝関節を入れた5名が対象ですので、絶対値をそのまま一般の方に当てはめることはできません。

Q. 階段を降りるのが怖いのは、筋力が落ちたからですか。

筋力だけでは説明がつかないようです。膝の変形性関節症のある方28名を調べた研究では、「降りるのが難しい」という自己評価を最も強く説明したのは動きや痛みへの恐怖(キネシオフォビア)で、対照群と差があった動作のパターンや筋力の指標では説明されませんでした。ただし28名という小さな研究で、横断研究のため因果関係は分かりません。筋力を鍛える意味がないという話ではなく、怖さへの手当ても同時に必要だということです。

Q. 手すりを使わないように練習したほうがいいですか。

順番が逆になりがちです。まず手すりを持って安心して降りられる状態を作り、そのあとで指2本だけ添える、手を離して構える、使わない、と段階的に減らしていくほうが進みます。怖いまま手を離すと体が固まり、かえって不安定になります。手すりは練習の邪魔ではなく、練習を成り立たせる道具だとお考えください。段の高さを下げることと組み合わせると、さらに安全に進められます。

Q. ゆっくり降りる練習はエキセントリックだから危ないと聞きました。

混同されやすいところです。膝の変形性関節症のある方38名を対象にした無作為化比較試験では、専用の機器で最大努力のエキセントリック訓練を行った群に重大な有害事象が25%発生しました。ただしこれは機器で最大の力を出す訓練の話で、低い段差を自分の体重でゆっくり降りる練習とは負荷の大きさがまったく違います。ですので降りる練習自体をやめる必要はありません。段を低くして回数を抑えるという慎重さには根拠があるとお考えください。

Q. 膝が痛いときは階段を避けたほうがいいですか。

厚生労働省の情報シートでは、高血圧・2型糖尿病・脂質異常症・変形性膝関節症があり、かつ状態が落ち着いている人を対象に、無理のない強度・頻度で始めて徐々に増やしていくことが重要だとされています。筋力トレーニングは週2〜3日が勧められています。いっぽうで「身体活動によって悪化する可能性のある合併症・運動器の痛みや変形がある場合があるため、事前に医師等の専門家に相談する」とも明記されています。ですので避けるかどうかを自己判断せず、まず受診してご確認いただくのが確実です。

参考にした主な研究・ガイドライン

・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」情報シート:慢性疾患を有する人の身体活動のポイント(e-ヘルスネット)
・Kutzner I et al.(2010)体内計測による観察研究/Journal of Biomechanics(PubMed)
・Stensdotter AK et al.(2023)横断・ケースコントロール研究/PM&R(PubMed)
・Grønne DT et al.(2024)横断研究/Age and Ageing(PubMed)
・Coudeyre E et al.(2024)無作為化比較試験/Journal of Clinical Medicine(PubMed)

姿勢評価つきの体験を受付中|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD

怖さが関わる課題は、人の目がない場所のほうが進みます。TRADは、鍛える前に姿勢・動作を評価してから進める完全個室のパーソナルジムです。降りる動作も、段の高さを変えながら実際に見ます。月会費なしの回数券制ですので、忙しい月があっても無駄になりません。太田川駅から徒歩4分、駐車場もございます。姿勢評価つきの体験トレーニングは90分・2,750円(税込)です。

→ 東海市・太田川駅のパーソナルジムTRADの特徴を見る

→ 姿勢評価つき体験(90分)の内容と料金

その場でのご契約はお願いしていません。内容を見たうえで、じっくりご検討ください。ご予約は公式LINE、または予約サイト(空き状況を見る)から承っています。

LINEで体験を予約する

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!