服を着るとき肩が痛い、シートベルトが取りづらい、夜に寝返りで目が覚める——「四十肩・五十肩かもしれない」と思われたときに、先に知っておいていただきたいことが2つあります。ひとつは「腕が上がらない=五十肩」ではないということ。日本整形外科学会は、肩腱板断裂について「五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです」と書いています。もうひとつは、「放っておけば自然に元通りになる」という説明が、研究では支持されていないことです。7件の研究を集めたレビューは「無治療のまま回復段階を経て完全に回復するという理論を支持する根拠はなかった」と結論しています。東海市・太田川駅から徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、運動指導の立場から整理します。
要点まとめ
・TRADは診断を行いません。この記事も、整形外科の受診に代わるものではありません
・肩の痛みには五十肩のほかに上腕二頭筋長頭腱炎・石灰沈着性腱板炎・肩腱板断裂などがあり、学会は画像検査などで区別するとしています
・腱板断裂との違いは「拘縮(動きが固くなること)が少ないこと」と学会が明記しています
・7件の研究のレビューは「無治療で回復段階を経て完全に回復するという理論は根拠に乏しい」と結論しています
・83名の追跡では、無治療でも94%が可動域を回復した一方、完全に痛みがなかったのは51%でした
・77名の試験では、痛みの範囲にとどめた群の89%が2年後に正常に近い肩の機能に達し、積極的に他動ストレッチを行った群は63%でした(1件の試験)
・糖尿病がある方は、ない方に比べて発症のオッズが3.69倍と報告されています
まず「腕が上がらない」の中身を分けます
日本整形外科学会の「五十肩(肩関節周囲炎)」のページには、診断について次のように書かれています。
「圧痛の部位や動きの状態などをみて診断します。肩関節におこる痛みには、いわいる五十肩である肩関節の関節包や滑液包(肩峰下滑液包を含む)の炎症のほかに、上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩腱板断裂などがあります。これらは、X線(レントゲン)撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで区別します。」
読んでいただいたとおり、画像検査で区別すると書かれています。つまり触ったり動かしたりするだけで見分けられるものではありません。ジムで「これは五十肩です」と申し上げることはできませんし、「五十肩ではありません」とも申し上げられません。
学会が挙げている見分けの軸
ただ、学会の「肩腱板断裂」のページには、手がかりになる記述があります。
「40歳以上の男性(男62%、女38%)、右肩に好発します。発症年齢のピークは60代です。」
「肩の運動障害・運動痛・夜間痛を訴えますが、夜間痛で睡眠がとれないことが受診する一番の理由です。運動痛はありますが、多くの患者さんは肩の挙上は可能です。」
「五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです。他には、挙上するときに力が入らない、挙上するときに肩の前上面でジョリジョリという軋轢音がするという訴えもあります。」
整理すると、「痛いけれど動きはする、ただし力が入らない」のか、「そもそも固くて動かない」のか——ここが学会の挙げている違いです。ただしこれは一般的な傾向の記述であり、ご本人に当てはまるかどうかは画像検査を含めた診察でなければ分かりません。
なお同じページには、保存療法について「断裂部が治癒することはありませんが、70%は保存療法で軽快します」とも書かれています。
「放っておけば元どおりになる」は言えるのでしょうか
よく聞く説明です。学会のページは、この点について両方を書いています。
「自然に治ることもありますが、放置すると日常生活が不自由になるばかりでなく、関節が癒着して動かなくなることもあります。」
「治ることもある」と「動かなくなることもある」が並んでいます。では研究ではどうでしょうか。
「段階を経て自然に完全回復する」という説明の根拠
凍結肩の自然経過を扱った研究を集めたレビューがあります(Wong et al. 2017)。タイトルが「凍結肩の自然経過——事実か、それとも作り話か」という、はっきりした問いになっています。508件から7件が選ばれました。
・質の低い証拠として、無治療は1〜4年の追跡で可動域に一部の改善をもたらしたが、完全な改善ではなかった
・「無治療のまま回復段階を経て完全に回復するという理論を支持する証拠はなかった」
・むしろ3件のランダム化比較試験の縦断データ(中程度の質)は、改善の大部分が後期ではなく早期に起きたことを示した
・原典の結論は「矛盾する証拠と支持する証拠の欠如は、凍結肩が無治療で回復段階を経て完全に解消するという理論に根拠がないことを示している」というものです
よく図で示される「炎症期→拘縮期→回復期」という段階のモデルそのものが、研究では裏づけられていない、ということです。
では、どこまで戻るのか
特発性の凍結肩の方83名を2年から27年追跡した研究があります(Vastamäki et al. 2012)。無治療群52肩、保存療法群32名、麻酔下授動術群22肩の3群です。無治療群の罹病期間は平均15か月(範囲4〜36か月)でした。
・無治療群の94%で、可動域が反対側と同じレベルまで回復しました
・いっぽう安静時・夜間・運動時のすべてで完全に痛みがなかったのは、無治療群の51%でした
・機能評価(Constant-Murleyスコア)は無治療群の平均83点で、年齢・性別で補正した正常値の86%にあたります
・原典の結論は「自然発症の凍結肩の患者の94%が、無治療で正常なレベルの機能と可動域まで回復した」というものです
ここは数字の読み方が大事です。可動域は94%が戻った。でも完全に痛みがなかったのは51%。裏を返せば、約半数に何らかの痛みが残っていたということになります。なおこの研究は後ろ向きの研究(Level IV)ですので、症状が長引いて他の医療機関にかかった方が無治療群から抜けている可能性は否定できません。
もう1件、40名を平均44か月(40〜48か月)追跡した古い研究があります(Binder et al. 1984)。
・可動域は年齢・性別を一致させた対照群より有意に少なかったです
・他動の可動域の制限は重度が5名、軽度がさらに11名(40名中16名=40%)に残っていました
・ただし「患者は肩の可動域が損なわれていることに気づいていないことが多かった」とされています
・原典の結論は「客観的な制限は残るものの、凍結肩の後期において機能的な支障はほとんどない」です
まとめますと、多くの方は日常生活で困らないところまで戻ります。ただし「完全に元どおり」とは限りません。そして「◯年で治ります」という期間を示した根拠のある研究は、今回の調査では見つけられませんでした。学会のページにも期間の記載はありません。ですのでTRADでは期間をお約束しません。
段階によって、やることは変わります
学会のページには、次のように書かれています。
「痛みが強い急性期には、三角巾・アームスリングなどで安静を計り、消炎鎮痛剤の内服、注射などが有効です。急性期を過ぎたら、温熱療法(ホットパック、入浴など)や運動療法(拘縮予防や筋肉の強化)などのリハビリを行います。これらの方法で改善しない場合は、手術(関節鏡など)を勧めることもあります。」
つまり痛みが強い時期と、それを過ぎた時期で、やることが違うという段階分けが公式に示されています。運動指導の出番は急性期を過ぎてからです。
「痛みを我慢して伸ばす」は、どうなのか
ここを直接比べた試験があります(Diercks & Stevens 2004)。特発性の凍結肩の方77名を、痛みの範囲内の運動(振り子運動と、痛みの出ない範囲での自分で動かす運動)にとどめる群と、他動ストレッチや徒手的な動かしを含む積極的な理学療法を行う群に分け、2年間追跡しています。
・痛みの範囲内にとどめた群…24か月時点で89%が正常またはそれに近い無痛の肩の機能(Constantスコア80以上)に達しました。12か月時点でも64%が達しています
・積極的な理学療法を行った群…24か月時点で63%でした
・原典の結論は「痛みの範囲内にとどめる方法は、積極的な理学療法と他動ストレッチよりもよい結果をもたらす」というものです
大事な注意を2つ書いておきます。これは「一切動かさずに安静にする」ことを支持する研究ではありません。痛みの範囲内の群も、振り子運動と自分で動かす運動は行っています。そしてこれは1件の試験(77名)です。この1本だけで「他動ストレッチは逆効果」と断定することはできません。言えるのは「痛みを我慢して伸ばすことを支持する根拠は乏しい」というところまでです。
医療機関では何が行われているのか
TRADは注射も手術も行いませんが、読者の方が選択肢を知っておかれることは大事だと考えますので、正直に書きます。
32件のランダム化比較試験(1,836名)を集めたコクランレビューがあります(Page et al. 2014)。
・徒手療法と運動の組み合わせを6週間行った場合、グルココルチコイド注射よりおそらく改善が劣るとされています(中程度の質の証拠)
・1件の試験(108名)では、治療成功を報告した割合が徒手療法+運動で46%、注射で77%でした
・別の1件(107名)では、痛みの改善が100点満点で注射58点に対し徒手療法+運動32点でした
・ただし原典は「その他の組み合わせについては、ほとんどの証拠が質の低いものであり、効果は不明である」とも述べています
いっぽう、専門外来に紹介された方を対象にした大規模な試験もあります(Rangan et al. 2020/UK FROST)。503名を、麻酔下での徒手授動術+注射、関節鏡下の関節包切離術、注射を併用した早期の構造化された理学療法の3群に割り付けました。
・12か月後の肩の評価(Oxford Shoulder Score、48点満点)は授動術38.3点/関節鏡40.3点/理学療法37.2点
・群間の差は1.05〜3.06点で、あらかじめ設定した目標の差を下回りました
・原典の結論は「3つの介入のいずれも、臨床的に優れているとは言えない」です
・重篤な有害事象は関節鏡で8件、授動術で2件報告されています
これは専門外来に紹介されるレベルの方が対象で、しかも3群すべてが注射を併用しています。「運動だけで手術と同じ」という話ではありません。それでも、手術をすれば確実に良い、というわけでもないということは読み取れます。
血糖値を指摘されている方へ
糖尿病との関連は、繰り返し報告されています。
・6件の症例対照研究(5,388名)の分析では、糖尿病がある方が凍結肩を発症するオッズは、ない方の3.69倍(95%信頼区間2.99〜4.56)でした(Dyer et al. 2023)。コホート研究2件ではハザード比1.32と1.67でした。ただし8件中7件でバイアスリスクが高いと判定されています
・有病率を調べた分析では、糖尿病の方は対照群の5倍(95%信頼区間3.2〜7.7)凍結肩を有しやすく、糖尿病の方における凍結肩の有病率は13.4%、凍結肩の方における糖尿病の有病率は30%と報告されています(Zreik et al. 2016)
なぜそうなるのかという仕組みは分かっていませんし、「糖尿病があれば必ず凍結肩になる」という意味でもありません。ただ、血糖について指摘を受けたことがあり、肩が上がらなくなってきたという場合は、早めに受診していただく理由にはなると思います。
運動指導の範囲でできること
医療機関を受診し、痛みの強い時期を過ぎてからが前提です。そのうえで、TRADでは次のような順番で進めます。
1. 痛みの出ない範囲を確かめる…どの角度まで、どの方向なら痛みが出ないか。ここを越えないという線を先に引きます
2. 振り子運動から始める…体を前に倒し、腕の力を抜いてぶら下げ、体を使って小さく揺らします。腕そのものの力では動かしません
3. 肩甲骨と胸郭を働かせる…肩の関節そのものが動きにくい時期でも、肩甲骨と肋骨は使えます。腕を上げる動きは、肩だけで行っているわけではありません
4. 反対側と全身を落とさない…肩をかばう期間が長くなるほど、ほかの部位の力や姿勢が崩れます。動かせるところを動かしておくことには意味があります
5. 動かせる範囲が戻ってきたら、支える力を戻す…肩のインナーマッスル(腱板)の鍛え方でご紹介している種目は、この段階からのものです
痛みを伴わない動きの硬さについては50代から肩が上がりにくくなる理由、肩甲骨の動きは肩甲骨が硬い人の特徴と動きを取り戻すエクササイズ、肩の位置は巻き肩の原因と改善方法、左右差は肩の高さが左右で違うのはなぜ?でご説明しています。
先に医療機関へご相談いただきたい場合
次のような場合は、運動より先に整形外科を受診してください。
・夜、痛みで目が覚める/眠れない
・転んだ、ぶつけた、引っ張られたあとから動かない
・腕に力が入らない、挙げようとしても上がらない
・肩を動かすとジョリジョリという音がする
・しびれがある、指先まで症状が広がっている
・発熱を伴う、肩が腫れて熱を持っている
・血糖値について指摘を受けたことがある
TRADは運動指導を行う施設であり、医療機関ではありません。痛みの原因を判断することはできませんし、この記事も診断の代わりになるものではありません。
TRADでのご案内の仕方
肩が上がらない状態でお越しになった場合、TRADがまず確認するのは「自分で挙げられないのか、他の人に動かしてもらっても動かないのか」、そして「どの方向のどの角度から症状が出るのか」です。これは診断ではなく、その日どこまで動かしてよいかを決めるための確認です。
そのうえで、姿勢と動作の評価で肩甲骨・胸郭・反対側の状態を見て、痛みの出ない範囲から組み立てます。完全個室・マンツーマンですので、痛みが出た時点ですぐ止められますし、その場で組み替えられます。東海市・太田川駅から徒歩4分、駐車場もございます。
そして、受診をおすすめしたほうがよいと判断した場合は、そうお伝えします。運動で何とかしようとしないことも、運動指導者の仕事だと考えています。
参考にした主な研究・ガイドライン
・Wong et al.(2017)システマティックレビュー/Physiotherapy(PubMed)
・Vastamäki et al.(2012)後ろ向きコホート研究/Clinical Orthopaedics and Related Research(PubMed)
・Binder et al.(1984)前向きコホート研究/Annals of the Rheumatic Diseases(PubMed)
・Diercks & Stevens(2004)前向き比較試験/Journal of Shoulder and Elbow Surgery(PubMed)
・Page et al.(2014)システマティックレビュー(コクラン)/Cochrane Database of Systematic Reviews(PubMed)
・Rangan et al.(2020)多施設ランダム化比較試験/The Lancet(PubMed)
・Dyer et al.(2023)システマティックレビュー+メタ分析/BMJ Open(PubMed)
・Zreik et al.(2016)メタ分析/Muscles, Ligaments and Tendons Journal(PubMed)
・日本整形外科学会「五十肩(肩関節周囲炎)」(日本整形外科学会)
・日本整形外科学会「肩腱板断裂」(日本整形外科学会)
よくある質問
Q. 腕が上がらないのは五十肩でしょうか。
ジムで判断することはできません。日本整形外科学会のページには、肩に起こる痛みには五十肩のほかに上腕二頭筋長頭腱炎、石灰沈着性腱板炎、肩腱板断裂などがあり、これらはX線撮影、関節造影検査、MRI、超音波検査などで区別する、と書かれています。手がかりとしては、同学会が肩腱板断裂について「五十肩と違うところは、拘縮、すなわち関節の動きが固くなることが少ないことです」と記しています。まずは整形外科を受診してください。
Q. 放っておけば自然によくなりますか。
そう単純には言えません。7件の研究を集めたレビューは「無治療のまま回復段階を経て完全に回復するという理論を支持する証拠はなかった」と結論しています。83名を2〜27年追跡した研究では、無治療群の94%で可動域が反対側と同じレベルまで回復した一方、安静時・夜間・運動時のすべてで完全に痛みがなかったのは51%でした。多くの方は日常生活で困らないところまで戻りますが、完全に元どおりとは限りません。
Q. どのくらいの期間でよくなりますか。
期間を示した根拠のある研究は、今回の調査では見つけられませんでした。日本整形外科学会のページにも期間の記載はありません。参考までに、83名の追跡研究で無治療群の罹病期間は平均15か月(範囲4〜36か月)でした。40名を平均44か月追跡した研究では、40%にあたる16名に他動の可動域の制限が残っていましたが、原典は「客観的な制限は残るものの、後期において機能的な支障はほとんどない」としています。TRADでは期間をお約束していません。
Q. 痛みを我慢してでも、しっかり伸ばしたほうがよいですか。
それを支持する根拠は乏しいです。77名を2年間追跡した試験では、痛みの範囲内の運動にとどめた群の89%が正常に近い無痛の肩の機能に達した一方、他動ストレッチを含む積極的な理学療法を行った群は63%でした。ただしこれは1件の試験ですので、断定はできません。また、この研究は「一切動かさない安静」を支持するものでもありません。痛みの範囲内の群も、振り子運動と自分で動かす運動は行っています。
Q. 糖尿病と関係があると聞きました。
関連は繰り返し報告されています。6件の症例対照研究(5,388名)の分析では、糖尿病がある方が凍結肩を発症するオッズは、ない方の3.69倍(95%信頼区間2.99〜4.56)でした。別の分析では、糖尿病の方における凍結肩の有病率が13.4%、凍結肩の方における糖尿病の有病率が30%と報告されています。ただし仕組みは分かっておらず、糖尿病があれば必ず発症するという意味でもありません。血糖について指摘を受けたことがあり肩の症状が出てきた場合は、早めの受診をおすすめします。
姿勢評価つきの体験を受付中|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
肩の症状は、まず整形外科でご相談ください。そのうえで「動かしてよい時期になったけれど、何をどこまでやってよいか分からない」という段階からが、TRADの出番です。痛みの出ない範囲を確かめ、肩甲骨・胸郭・全身の状態を落とさないところから組み立てます。太田川駅から徒歩4分、完全個室・駐車場もございます。姿勢評価つきの体験トレーニング(90分)は2,750円(税込)です。ご予約後にお送りするご確認メールから、事前にお支払いいただけます。
その場でのご契約はお願いしていません。現在の状態をうかがったうえで、受診をおすすめしたほうがよい場合はそうお伝えします。ご予約は公式LINE、または予約サイト(空き状況を見る)から承っています。

