「足を組むクセがあるのですが、骨盤が歪んで腰痛になりますか」。デスクワークの方からよくいただくご質問です。先に結論をお伝えします。足を組むと骨盤は確かに動きます。ただし動く量は数度です。そして、もっと大事な点があります。「骨盤の歪み」を手で触って判定する検査は、検査する人が変わるとほとんど一致しません。さらに症状のない方の95パーセントに骨盤の左右差があり、脚の長さの差の大小は腰痛の有無と関係していませんでした。この記事では、東海市・太田川駅から徒歩4分のTRADパーソナルコンディショニングジムが、研究で言えることと言えないことを整理します。
要点まとめ
・足を組むと骨盤は動きます。若い健常者30名の計測では、骨盤の捻れがプラス1.0度からマイナス1.5度へ変化しました。動いた量は2.5度ほどです
・ただし足を組まない座り方でも、すでに1.0度の左右差がありました。組まなくても非対称はあるということです
・🚨 「骨盤の歪み」を手で触って判定する検査は、検査者が変わると一致しません。一致の指標(κ係数)は0.04〜0.19で、経験のある理学療法士2名でも一致率は40〜44パーセントでした
・症状のない大学アスリート44名中42名(95パーセント)に骨盤の左右差がありました。健常者134名の骨盤の傾きは中央値2.0度でした
・脚の長さの差の大小は、腰痛の有無と関係していませんでした(腰痛なし5.5mm/腰痛あり5.3mm)
・足を組む習慣と腰痛を直接調べた研究は確認できませんでした
・実際に確認されているのは別のことです。膝の上で足を組んだまま血圧を測ると、数mmHg〜10mmHg高く出ます(足首で組むだけなら影響なし)
・対処の軸は「組まない」より「座りっぱなしを切る」ほうです
・TRADは診断を行いません。「骨盤を整える」という言い方もしていません
足を組むと、実際に何が起きているのか
まず、計測されていることから確認します。
健常な若年者30名(平均20.4歳)を3次元の計測システムで調べた2016年の研究では、右脚を左膝の上に乗せて座ると、骨盤の捻れがプラス1.0±1.6度からマイナス1.5±2.2度へ変化しました。右の骨盤が後ろに回る方向です。あわせて体の右側の長さが471.2mmから459.0mmへ短くなりました。
腰痛のある方30名と健常者30名を比べた2020年の研究でも、足を組むと骨盤の左右の傾きが増え、体幹が丸まる方向に動きました。ここで注目していただきたいのは、骨盤の傾きの増え方は、腰痛のある群とない群で差がなかったという点です。差が出たのは体幹の丸まり方と、お尻にかかる圧の左右差でした。
ここから言えるのは「足を組むと、組んでいる間は骨盤と体幹が非対称に動く」ところまでです。そしてもう1つ、見落とされやすい事実があります。足を組んでいない状態でも、すでに1.0度の捻れがありました。左右差は、組まなくても元からあるということです。
では「歪む」のでしょうか
長く組み続けるとどうなるのか。これを調べた研究はあります。
若年者232名を「足を組む時間」で分けた2014年の横断研究では、1日3時間以上組む群で、左右の腰骨(上前腸骨棘)の高さの差が13.25±5.58mm、組まない群で5.75±2.26mmでした。
これだけ見ると「やはり歪む」と読めます。ですが横断研究ですので、因果の向きが分かりません。長く組んだから差が出たのか、もともと左右差がある人が組みやすいのか、区別できないのです。実際、先ほどの2016年の研究の考察にも「脚の長さが違う人が、骨盤の高さをそろえるために足を組む」という逆向きの可能性が書かれています。
また、対象は平均22歳で、痛みの有無も調べられていません。1日3時間以上というのは、起きている時間のかなりの部分を組み続ける特殊な群でもあります。
いちばん大事な点:「歪み」は測れるのでしょうか
ここがこの記事の核心です。そもそも骨盤の歪みは、手で触って判定できるのでしょうか。
答えは「かなり怪しい」です。
無症状の方10名を、上級の整骨学生10名が合計1,200回評価した2000年の研究では、検査する人が変わったときの一致の指標(κ係数)は、左右の腰骨の後ろの出っ張り(PSIS)で0.04、骨盤の高さで0.08、仙骨の溝で0.07でした。原著はこの水準を「slight(わずか)」と表現しています。
もっと厳しい結果もあります。腰や仙腸関節に痛みのある25名を、経験のある理学療法士2名が別々に評価した2008年の研究では、一致率は40〜44パーセント、κ係数は0.11〜0.17でした。原著の結論はこうです。「非対称を検出し、介入を選ぶ方法としてこれらの検査を使い続けることは、有用性が疑わしい」。
この領域をまとめたレビューでも、腰と骨盤の骨の目印を触って左右差を見る検査の検査者間の一致は、上前腸骨棘でκ −0.01〜0.19、後ろ側でκ 0.04〜0.15と報告されています。
つまり「あなたの骨盤は歪んでいます」と判定する土台そのものが、研究では支持されていないということです。TRADが「骨盤の歪みを整えます」という言い方をしないのは、この理由によります。
症状のない人にも、左右差はほぼ全員にあります
もう1つ、知っておいていただきたいことがあります。左右差があること自体は、珍しくありません。
・無症状の大学アスリート44名のうち42名(95パーセント)に、骨盤の左右の傾きの差がありました。73パーセントで右側が前に回っており、脚の長さもほとんどの方で左右差がありました(68パーセントは左脚が長い)。ただし骨盤の傾きと脚長差の相関は弱い(r=0.33〜0.44)という結果でした
・整形外科以外の理由で受診した134名の立位エックス線では、骨盤の傾きの中央値は2.0度(四分位0.9〜3.1度)でした。原著の結論は「わずかな骨盤の傾きは正常でありうる。医師は、それが常に痛みや側弯、外転筋の弱さによるものだと決めつけるべきではない」です
・働く世代247名をエックス線で測った研究では、腰痛の経験がない53名の脚長差が平均5.5±4.1mm、過去1年に日常生活に支障のある腰痛があった78名が5.3±4.0mmでした。差はありませんでした
この最後の研究のタイトルは、そのまま「軽度の脚長差と腰痛の関連は疑わしい」です。
肩の高さの左右差についても同じことが言えます。詳しくは肩の高さが左右で違うのはなぜ?をご覧ください。TRADは、左右差そのものを問題にするのではなく、動きを見るという立場です。
では足を組むと腰痛になるのか
ここは正直に書きます。足を組む習慣と腰痛を直接調べた研究は、確認できませんでした。
骨盤の非対称と腰痛の関係についても、結果は割れています。最も規模の大きい症例対照研究(282名)では、臨床的に意味のある関連は認められませんでした。いっぽう小規模な研究(56名)では弱い関連(オッズ比1.17〜1.21)が報告されています。
ですので、TRADは「足を組むと腰痛になります」とは申し上げません。同時に「足を組んでも何の影響もありません」とも言いません。確かめられていないことを、どちらの方向にも断定しないという立場です。
むしろ「組むのには理由がある」という見方もあります
意外に思われるかもしれませんが、足を組むことを肯定的に解釈した研究もあります。
1995年に Spine に出た筋電図の研究では、座っているときに足を組むと、お腹の斜めの筋(内腹斜筋・外腹斜筋)の活動が有意に下がりました。研究者たちは、体幹と骨盤を支える筋の仕事を、足を組むことで代わりに担っているのではないかと考えました。
この論文の背景にはこう書かれています。「足を組んで座ることは男女ともに非常に一般的です。この姿勢に有益な効果があるという確かな根拠も、有害な効果があるという確かな根拠も存在しません」。1995年の記述ですが、今回調べた範囲でも、この状況は大きくは変わっていません。
血流についても、よく言われることと逆の結果があります。30分間座ったときの比較では、足を組んだほうが、足裏を床につけて座るより大腿の動脈の血流の落ち込みが小さく、血管機能の指標は座り方で変わりませんでした。「足を組むと血流が悪くなる」を支持する結果ではなかったということです。
実際に確認されている影響:血圧の測定値
いっぽうで、はっきり確認されている影響もあります。血圧を測るときです。
無作為化して条件を入れ替えた1999年の研究(健常者50名+高血圧の方53名)では、足を組んで測ると高血圧の方で収縮期血圧がプラス8.1〜10.5mmHg、健常者でプラス2.3〜2.5mmHg高く出ました。
111名を調べた2007年の研究でも、膝の上で組むと収縮期血圧が、高血圧の方でプラス6.7mmHg、糖尿病で治療中の方でプラス7.9mmHg、血圧が正常な方でプラス2.7mmHg高くなりました。そして足首で組むだけなら、どの群でも影響はありませんでした。
ここは実務的に使える話です。ご家庭で血圧を測るときは、足を組まずに床につけてください。10mmHgの差は、測定のたびに一喜一憂する幅としては大きすぎます。
ただしこれは「測定値が上がる」という話で、足を組むと高血圧になるという話ではありません。血圧が気になり始めた方の運動については血圧が気になり始めたらをご覧ください。
対処の軸は「組まない」ではありません
ここまでをふまえると、やることは変わってきます。「足を組まないようにする」ことに力を注ぐより、「座りっぱなしを切る」ほうが根拠があります。
79の研究をまとめた2021年のメタ解析では、1日全体の座位時間と腰痛のオッズ比が1.19(1.03〜1.38)、職場での座位時間と腰痛が1.47(1.12〜1.92)、首肩の痛みが1.73(1.46〜2.03)と報告されています。ただし原著自身が「逆の因果の可能性を排除できない」と書いています(痛いから座っている、という向きです)。
公的な記載も確認しました。厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)の成人向けの推奨には、「座位行動(座りっぱなし)の時間が長くなりすぎないように注意する」とあります。ただし「何分ごとに」という数値の記載はありません(全文を検索して確認しました)。
よく言われる「30分ごと」という数字は、血糖のコントロールを調べた研究から来たもので、腰痛のために決まった数字ではありません。しかもその研究自体、根拠の質は低いと評価されています。ですのでTRADは「30分ごとに立てば腰痛が防げます」とは申し上げません。目安として使っていただく、という扱いです。
そのうえで、現場でお伝えしているのは次の3つです。
1つ目は、同じ姿勢で固まる時間を短くすることです。立つだけでなく、歩く・しゃがむ・背伸びをするなど、関節を動かすほうが目的に合います。昇降デスクで立つだけでは腰の症状に差が出なかったという研究もあります。
2つ目は、組む側を意識的に入れ替えることです。これは研究で効果が確かめられた方法ではありません。ただ、同じ側ばかりで何時間も固定するより、片側に偏らないほうが自然だという考え方です。現場で使っている工夫としてお伝えしています。
3つ目は、椅子と机の高さを見直すことです。足が床に届かない椅子では、人は足を組んで安定を作ろうとします。座り方そのものについてはデスクワークの正しい座り方、座りすぎの影響は座りすぎが体に起こす変化で扱っています。長時間の運転で腰が痛む方は車の運転で腰が痛くなるのはなぜ?もご覧ください。
ただし、長時間そのままは別の問題があります
1点だけ、はっきり注意していただきたいことがあります。長時間、足を組んだまま動かないのは避けてください。
姿勢が原因で足首が上がらなくなった(下垂足)26名を調べた研究では、原因となった姿勢はしゃがみ込みが14名、足を組んで座るのが6名でした。神経が圧迫されていた時間は平均124.2分で、最も多い症状はつま先が持ち上がらないこと、次いで足の甲のしびれやピリピリ感でした。多くは数週間で回復し始めています。
これは「足を組む人の何パーセントに起こるか」を調べた研究ではありませんので、頻度は分かりません。ただ、2時間ほど同じ姿勢で固まるのは避けるという目安としては使えます。
足首が上がらない、足の甲がしびれる、脚に力が入らないといった症状が出た場合は、運動で様子を見る対象ではありません。医療機関にご相談ください。TRADは診断を行いませんので、該当する場合は受診をおすすめしています。
骨盤についてのTRADの立場
最後に、サイト内での立場をそろえておきます。
TRADには骨盤の歪みは自分でわかる?や骨盤が後ろに倒れる(骨盤後傾)とどうなる?という記事があります。これらと今回の記事は、役割が違います。
TRADが見ているのは「静止した状態の左右差」ではなく「動き」です。立っているときの骨盤の高さが数ミリ違うことより、片脚立ちで支えられるか、しゃがんだときに左右で違いが出るか、振り向きやすさに差があるか——こちらのほうが、運動を組むうえで意味があります。
そして「歪みを整える」という言い方はしません。判定の土台が弱いことと、「歪んでいる」と言われること自体が不安につながることの両方が理由です。
東海市・大府市・知多市から通われている方の実際
「足を組むクセが悪いのでしょうか」とご相談を受けたとき、TRADはまずその方が1日のうちどれくらい座っているかをうかがいます。足を組むかどうかより、同じ姿勢で何時間固まっているかのほうが、評価で見える体の状態とよく対応するためです。
そのうえで、片脚立ちやしゃがむ動作を見ると、左右で明らかに違う方がいらっしゃいます。この場合に取り組むのは「組まないようにすること」ではなく、使えていない側を使えるようにすることです。
完全個室・完全予約制ですので、こうした確認を落ち着いて進められます。太田川駅東口から徒歩4分、お車の方には建物北側「5番」の駐車スペースをご用意しています。
参考にした主な研究・ガイドライン
・厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」(令和6年1月)
・Lee et al.(2016)実験研究(事前事後比較)/Journal of Physical Therapy Science(PMID: 27942141)
・Jung et al.(2020)実験研究(群間比較)/International Journal of Environmental Research and Public Health(PMID: 32605016)
・Park & Bae(2014)横断研究/Journal of Physical Therapy Science(PMID: 25435692)
・O’Haire & Gibbons(2000)パイロット研究(検査者間一致)/Manual Therapy(PMID: 10688955)
・Holmgren & Waling(2008)検査者間信頼性研究/Manual Therapy(PMID: 17210266)
・Krawiec et al.(2003)観察研究/Manual Therapy(PMID: 14559043)
・Moharrami et al.(2023)横断研究/Journal of Experimental Orthopaedics(PMID: 37254005)
・Soukka et al.(1991)横断研究(エックス線)/Spine(PMID: 1828627)
・Snijders et al.(1995)実験研究(筋電図)/Spine(PMID: 8578373)
・Peters et al.(1999)無作為化クロスオーバー試験/Blood Pressure Monitoring(PMID: 10450120)
・Adiyaman et al.(2007)観察研究/Blood Pressure Monitoring(PMID: 17496470)
・Tremblay et al.(2019)実験研究/Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism(PMID: 30102871)
・Dzakpasu et al.(2021)システマティックレビュー・メタ解析/International Journal of Behavioral Nutrition and Physical Activity(PMID: 34895248)
・Yu et al.(2013)症例集積研究/Journal of Korean Neurosurgical Society(PMID: 23908699)
よくある質問
Q. 足を組むと骨盤が歪みますか。
組んでいる間に骨盤が動くことは計測されています。若年者30名の研究では、右脚を組むと骨盤の捻れがプラス1.0度からマイナス1.5度へ変化しました。ただし動いた量は2.5度ほどで、足を組まない状態でもすでに1.0度の左右差がありました。長く組む習慣と骨の変形を結びつけた研究は確認できておらず、1日3時間以上組む群で左右の腰骨の高さの差が大きかったという横断研究も、因果の向きが分かりません。そもそも骨盤の歪みを手で判定する検査自体、検査者が変わるとほとんど一致しません。
Q. 「骨盤が歪んでいる」と言われたのですが、本当でしょうか。
判定の土台が弱いことは知っておいてください。無症状の方を複数の検査者が評価した研究では、左右の腰骨を触って左右差を見る検査の一致の指標(κ係数)は0.04〜0.19でした。経験のある理学療法士2名でも一致率は40〜44パーセントです。また、症状のない大学アスリート44名のうち42名(95パーセント)に骨盤の左右差がありましたし、健常者134名の骨盤の傾きの中央値は2.0度でした。左右差があること自体は珍しくありません。TRADは「骨盤の歪みを整える」という言い方をしていません。
Q. 足を組むと腰痛になりますか。
足を組む習慣と腰痛を直接調べた研究は確認できませんでした。骨盤の非対称と腰痛の関係も結果が割れており、最も規模の大きい症例対照研究(282名)では臨床的に意味のある関連は認められていません。また、脚の長さの差の大小は腰痛の有無と関係していませんでした(腰痛なし5.5mm、腰痛あり5.3mm)。ですので「足を組むと腰痛になる」とも「何の影響もない」とも断定していません。確かめられていないことを、どちらの方向にも断定しないという立場です。
Q. 足を組むのをやめたほうがいいですか。
やめることに力を注ぐより、座りっぱなしを切るほうに根拠があります。79研究のメタ解析では座位時間と腰痛のオッズ比が1.19〜1.47と報告されていますが、原著自身が逆の因果の可能性を排除できないと書いています。厚生労働省のガイドも「座りっぱなしの時間が長くなりすぎないように」と書くだけで、何分ごとという数値はありません。足を組むことについては、むしろお腹の斜めの筋の活動が下がるという報告があり、研究者は安定の代わりを担っている可能性を指摘しています。
Q. 足を組んだまま長く座っていると危ないことはありますか。
長時間そのまま動かないのは避けてください。姿勢が原因で足首が上がらなくなった26名を調べた研究では、原因の姿勢はしゃがみ込みが14名、足を組んで座るのが6名で、神経が圧迫されていた時間は平均124.2分でした。症状はつま先が持ち上がらないこと、足の甲のしびれやピリピリ感です。頻度を調べた研究ではないので「どれくらいの確率で起こるか」は分かりませんが、2時間ほど固まらないという目安には使えます。しびれや力の入りにくさが出た場合は医療機関にご相談ください。
姿勢評価つきの体験を受付中|東海市のパーソナルトレーニングジムTRAD
TRADが見ているのは、静止した状態の左右差ではなく動きです。片脚で支えられるか、しゃがんだときに左右差が出るか、振り向きやすさに違いがあるか——運動を組むうえで意味があるのはこちらです。「歪んでいる」という言い方はしません。太田川駅東口から徒歩4分、駐車場もございます。姿勢評価つきの体験トレーニングは90分・2,750円(税込)で、ご予約確定後の確認メールから事前にお支払いいただけます。
その場でのご契約はお願いしていません。じっくりご検討ください。ご予約は公式LINE、または予約サイト(空き状況を見る)から承っています。

